購買意思決定プロセスとは?消費者の行動心理を5段階で解説

「買うつもりはなかったのに、気づいたらカートに入れていた」そんな経験、ありませんか?
私たちの購買行動は、感情・情報・比較など、無意識の“5つのステップ”を経て決まっています。
この記事では、心理学・論文に基づいた購買意思決定プロセスを、実例を交えながらやさしく解説。マーケター必見の「人が動く理由」がきっと見えてきます。
購買意思決定プロセスとは?消費者の行動を段階で理解する
購買意思決定プロセスとは、消費者が「買おう」と決めるまでの心理的・行動的なステップを体系的に整理したものです。
商品やサービスが売れる仕組みを理解するには、単に“欲しい”と思わせるだけでなく、その背景にあるプロセスの把握が欠かせません。
この考え方は、アメリカの経済学者フィリップ・コトラーやハワード=シェスモデルに代表されるように、多くの学術論文・研究で体系化されており、マーケティング理論の礎のひとつとされています。
購買意思決定プロセスの定義と全体像
購買意思決定プロセスは一般的に次の5つのステップで構成されます。
- 問題認識
- 情報探索
- 代替案の評価
- 購買決定
- 購買後行動
この枠組みは、米国の消費者行動論の研究から発展し、現在はマーケティング分野での基礎理論として広く用いられています。消費者の「行動」と「感情」を可視化するための重要なフレームワークといえるでしょう。
例えば、Alina Stankevich氏の論文「Explaining the Consumer Decision-Making Process」では、消費者の意思決定プロセスにおける「重要な瞬間(moments that matter)」と、それに影響を与える要因についての枠組みが提案されています。
消費者はなぜ段階的に意思決定するのか
消費者の購買には必ず“迷い”や“比較”のプロセスが存在します。突然買うのではなく、「必要かもしれない」→「調べる」→「納得する」という心理の段階が安心感につながるからです。
このプロセスに沿ってコミュニケーション設計をすることで、自然な購入導線を作ることができます。
5つの購買意思決定プロセスを理解しよう
消費者が商品を購入するまでには、一般的に5つの段階があるとされます。それぞれのステップで適切な施策を打つことが、マーケティング成功の鍵です。
1. 問題認識:きっかけが購買行動の始まり
購買行動は、「スマホが重い」「スニーカーが古くなった」といった小さな問題意識から始まります。この“気づき”が最初の一歩。
また、広告・SNS・口コミなどの外部刺激によって、本人すら気づいていなかったニーズが顕在化することもあります。企業はこの「問題認識」の段階で、潜在ニーズに気づかせる工夫が求められます。
2. 情報探索:信頼できる情報源を探す
次に消費者は、課題を解決するための選択肢を探し始めます。比較サイト、レビュー、公式ページ、YouTube、SNSなど、情報の取得経路は多様です。
BtoCでは感情やブランドイメージが影響を与えますが、BtoBでは実績やコストパフォーマンスといった合理性が重視される傾向にあります。
3. 代替案の評価:比較・選別する段階
集めた情報をもとに、「どれが最適か」を比較検討するフェーズです。価格、機能、デザイン、口コミなど、多面的な観点で評価されます。
ただし、選択肢が多すぎると「決められない疲れ」が生じることもあるため、企業側は情報を整理しやすい形で提供することが大切です。
4. 購買決定:最終判断とその後押し要因
この段階で消費者は「買うかどうか」の決断を下します。ここでの後押し要因は「割引」「キャンペーン」「残りわずか」などの限定感、「レビューの高さ」「即日配送」「保証」など安心材料です。
また、近年では共感を呼ぶブランドメッセージやストーリーが感情を動かし、購入決定を加速するケースも増えています。
5. 購買後行動:リピートや口コミへの影響
購入後の体験が良ければ、消費者は商品をリピートしたり、他人に勧める「推奨者(ロイヤルカスタマー)」になります。
一方で、期待を裏切られるとネガティブレビューやSNSでの拡散など、ブランドにマイナスの影響を及ぼすこともあります。
このため、企業は購買後のフォロー施策(メール・キャンペーン・サポート)にも注力する必要があります。
BtoBにおける購買意思決定プロセスの特徴
BtoCとは異なり、BtoBでは「個人の好み」ではなく「組織の判断」によって購買が行われます。購入までの道のりが長く、関係者も複数にわたるのが特徴です。
企業・組織では誰が購買を決めるのか?
企業が何かを導入する場合、1人の担当者だけで決めることはほとんどありません。利用する現場担当者、決裁権をもつマネージャー、費用対効果を見る財務責任者など、複数の人物が関与します。この「合議制」がBtoB購買の特徴です。
たとえば、ある営業支援ツールを導入する場合、営業現場の課題感を把握し、上司がその必要性を確認し、経理部門が予算内であることを承認する……という流れになります。誰のどの立場を納得させるかによって、訴求ポイントも変わってくるのです。
BtoCとの違い:理屈・合理性・導入後成果がカギ
BtoCが「欲しいから買う」なら、BtoBは「買うべき理由があるから導入する」。この違いが最大のポイントです。
購入にあたっては、価格やスペックだけでなく、
- 社内の他システムとの連携性
- セキュリティや運用体制
- 過去の導入実績や信頼性
など、非常に多くの要素が検討されます。また、比較表(RFP)を用意して複数のベンダーを横並びで比較することも一般的です。
BtoBマーケティングでは、論理性と実績、そして導入後のサポート体制が重視されます。単なる商品紹介ではなく、「なぜ御社に最適か」を論理的に示す必要があるのです。
消費者インサイトと購買意思決定の関係
消費者が「何を基準に買うか」は、必ずしも自分でも自覚できているわけではありません。
マーケティングで成果を出すためには、表に出てこない“本音”=インサイトを掘り起こすことが重要です。
このような「本人も気づいていない意思決定要因」は、行動経済学や認知心理学の領域でも研究が進んでおり、ダン・アリエリー氏の実験論文や『Predictably Irrational』といった著作が、消費行動における非合理な選択の可視化に貢献しています。
“なぜ買うのか”の理由は、本人も説明できない
たとえば、「スマホが重いから買い替えたい」と言っている人がいたとします。でも実際は、「新しいiPhoneを持っている友達がうらやましい」「話題に乗り遅れたくない」といった気持ちが本音だったりします。
こうした「自分でも気づいていない購買の動機」がインサイトです。論理的な説明ではなく、感情・欲求・社会的な影響が、購買の背中を押していることは少なくありません。
企業にとって、こうした本音に気づくことは、メッセージの一言、デザインの色、広告の表現を変えるだけで売上が変わるほど重要です。
インサイトを発見する手法例
インサイトは、ただ観察しているだけでは見つかりません。感情や視線、言葉に出さない表情など、無意識の反応を丁寧に拾い上げる必要があります。
たとえば以下の手法があります。
- 感情分析:SNSの投稿やインタビューの言葉に含まれる感情をAIで解析
- 視線計測:どの場面で注目していたかを可視化
- 行動観察:店頭での動きやWebでの遷移をチェック
- インタビュー:あえて曖昧な質問で深層心理を探る
これらを組み合わせることで、「何に惹かれて買ったのか」「なぜその場面で離脱したのか」など、“決定的瞬間”のヒントが見えてきます。
スマホに見る購買意思決定プロセスの具体例
購買意思決定プロセスは、教科書的な理論にとどまらず、私たちの日常に深く関係しています。ここでは、学生がスマホを機種変更するケースを例にとって、プロセスの流れを具体的に見ていきましょう。
学生のスマホ機種変更におけるプロセス
1. 問題認識(気づき)
ある日、SNSで話題の動画がカクついて表示されたことで、「スマホが古くて不便だ」と実感。ここで「買い替えたいかも…」という意識が芽生えます。
2. 情報探索(調べる)
YouTubeでレビュー動画をチェックし、友人のおすすめを聞いたり、価格比較サイトを巡回。信頼できる情報を集めながら、「iPhoneとAndroid、どちらがいいか」を考え始めます。
3. 代替案の評価(比較する)
価格、バッテリー性能、カメラ機能、デザインなど、いくつかの軸で比較。スペックの表だけでは決めきれず、実店舗で実際に触ってみることで、「自分に合うかどうか」を確かめます。
4. 購買決定(決める)
最終的な決め手は、「学割キャンペーン」と「即日受け取り可能」だったこと。加えて、SNSで「買ってよかった」と満足げに語る投稿も、後押しになりました。
5. 購買後行動(使う・広める)
購入後は、写真の画質や操作性に大満足。SNSで「#新しいスマホ最高」と投稿し、同級生からの「いいね」やコメントが集まります。こうして、口コミ=次の消費者への影響へと繋がっていきます。
購買プロセスは一つの行動ではなく、いくつもの段階を経て成り立っています。消費者自身も意識していない“裏側の動き”に注目することで、より的確なマーケティング施策が見えてくるのです。
まとめ|購買意思決定プロセスを理解すればマーケティングの精度が上がる
購買という行為は、単なる「買う」だけではありません。そこには、「気づき・調べる・比べる・決める・使って広める」という連続した心理と行動の流れがあります。
企業側がこの流れ=購買意思決定プロセスを理解することで、「いつ」「どこで」「何を伝えるべきか」が明確になります。
- 問題認識には「ニーズを喚起する広告」
- 情報探索には「信頼されるコンテンツ」
- 評価には「比較しやすいデータや導線」
- 決定には「背中を押すオファー」
- 購買後には「満足感とシェアしたくなる体験」
こうした段階ごとの最適解を見つけるには、データドリブンな分析と、消費者インサイトを捉える観察眼の両方が不可欠です。
“なんとなく作った広告”や“感覚で決めたキャンペーン”では、顧客の心には届きません。行動心理に根ざしたマーケティングこそが、今後ますます求められるのです。
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法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。
1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス&クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業(博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される(2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center)。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒 脳が断れない「無敵のセールスシステム」』(きずな出版)、共著に『仕事の教科書』(徳間書店)がある。