IQやEQだけでは生き残れない?人生を豊かにする「メンタルリテラシー」とは

「IQやEQは聞いたことあるけど、MQやメンタルリテラシーって何?」「私には関係ないかも…そう思っていませんか?」
実は、これからの人生を生き抜く上で、そして毎日を生き生きと過ごす上で、これらの「新しい賢さ」が非常に重要になってきているように感じています。人生100年時代、変化の激しい現代において、私たちは今までとは違う種類の「賢さ」を求められているのではないでしょうか。本記事では、この重要な「メンタルリテラシー」とは何か、なぜ必要なのか、そしてそれを構成する要素や高める具体的な方法について、臨床現場や科学的な知見も踏まえながら、ご紹介できればと思います。
IQやEQだけでは不十分?求められる新しい賢さ
多くの方が「賢さ」と聞いてまず思い浮かべるのは、学力や論理的思考力を測るIQ(知能指数)かもしれませんね。また、最近では自己や他者の感情を理解し、適切に関わる力を示すEQ(感情的知能)の重要性も広く知られるようになりました。
しかし、IQの研究から見えてくるのは、IQの高さが必ずしもその人の幸福度や所得に直結するわけではない、という事実です。また、EQが高ければ心の豊かさを得られる可能性はあるものの、それが人生における具体的な成果や結果に必ずしもつながるわけではないようです。さらに、その状態を長期的に維持できるかどうかはまた別の話になってくるのかもしれません。
これからの複雑で変化の激しい時代を生き残り、さらに生き生きと人生を謳歌するためには、IQやEQだけでは測りきれない、別の種類の「賢さ」が求められている。そう感じずにはいられません。それが、今回お話ししたい「メンタルリテラシー」という能力です。
メンタルリテラシーとは?人生を豊かにする能力
では、メンタルリテラシーとは具体的に何を指すのでしょうか?これは、自分自身の心のプロセスや他者の心のプロセスを理解し、それを解釈し、適切に関わっていく能力全般を指すと言えるでしょう。感情的知性(EQ)や認知機能(CQ)といった概念とも関連が深く、より幅広いスキルと知識を含む概念と理解しています。
このメンタルリテラシーが高いことのメリットは、計り知れません。例えば、人生で避けられない様々な問題に直面した際、その解決速度がものすごく早くなる可能性があります。また、人間関係においても、人との基本的な関わり方を良好に保つことができ、さらにはより質の高い、深い関係性を築くことも可能になるでしょう。
加えて、自分自身の能力や技術の吸収率を高めることができたり、どんな困難や障害にも突破する方法を見出したり、困った時に素直に他者に助けを求めることもできるようになるかもしれません。
これは、単に「頭が良い」「賢い」といった、従来の学力や地頭の良さとは少し異なるレベルの話です。むしろ、人間が本来持っている、あるいは持つ可能性のある能力をいかにうまく引き出し、活かせるか、という点に関わってくるように思います。私たちはホモサピエンスとして、本来非常に賢い生き物であるはずなのですが、この賢い部分を、意外にも多くの人が十分に活用できていないのが現状なのではないでしょうか。現代社会は、かつてのように本能のまま生きるだけでは立ち行かないほど、複雑で予測不可能な様相を呈しています。だからこそ、このメンタルリテラシーが、これからの人生を生き抜く上で、そしてより豊かに過ごす上で非常に重要な鍵となるように感じています。
メンタルリテラシーを構成する9つの力
メンタルリテラシーは、いくつかの重要な要素から成り立っています。私が考える、特に核となる9つの要素をご紹介させてください。
- 自己認識(Self-Awareness)
- 感情の認識: 自分が今どんな感情を感じているのかを正確に把握する能力です。怒りや悲しみといった感情に気づけない、あるいは「こんな感情を持ってはいけない」と抑圧してしまうのではなく、心の奥底にある感情の機微を理解することが重要になります。感情の濃淡を感じ取れることで、人生の中の小さな喜びや幸せにも気づきやすくなるのではないでしょうか。また、ネガティブな感情に早期に気づければ、それが大きくなる前に適切に対処できるようになるはずです。
- 思考・信念の認識: 自分自身の考え方や、無意識に「当たり前」だと思っている信念(ビリーフ)が、自分の行動や感情にどう影響しているかを理解する能力です。私たちは、育った環境や触れてきた情報(メディアや親など)から、知らず知らずのうちに様々な考え方や信念を吸収しています。それらを「これは本当に自分の考えだろうか?」「なぜ自分はそう思うのだろう?」と一つ疑ってみる視点が、自分自身を深く理解する上で重要になるように思います。(例えば、なぜか続けている習慣の理由を遡っていくと、意外なルーツが見つかることがありますね。あの「ハムの両端を切る」話のように。)
- 感情調整(Emotion Regulation)
- 自分の感情を、心身にとって健康的な方法で管理し、適切に対応する能力です。感情を力ずくで「抑えつける」というイメージよりも、リモコンでテレビのチャンネルを選んだり、音量を調整したりするように、感情の質やレベルをコントロールできる、というイメージが近いかもしれません。ネガティブな感情に気づいたときに、それに溺れるのではなく、建設的な方向へ意識を向けたり、感情の強度を調整したりする技術です。ストレス管理も、この感情調整能力の一部と言えるでしょう。
- 社会的スキル(Social Skills)
- 共感(Empathy): 他人の感情を理解し、それを自分の心でも感じ取ることができる能力です。単に相手と一緒に落ち込んだり、感情に流されたりすること(共鳴)とは少し違います。相手の感情を理解した上で、「この人は今、どう感じているのだろう」「この人がより良い状態になるためには、どう関われば力になれるだろうか」と考える力です。
- コミュニケーション(Communication): 相手との効果的な対人コミュニケーションを行う能力と、相手の話を積極的に、そして真摯に聴く傾聴スキルです。人は自分の話をしたがる傾向があるのは自然なことですが、それ以上に、相手に興味を持ち、質問を投げかけ、会話の内容や方向性を調整していく力が、より良い関係性を築く上で非常に重要になってくるように感じます。
- 批判的思考(Critical Thinking)
- 与えられた情報や物事を鵜呑みにせず、その裏側にある意図や根拠を問い直し、多角的に分析・評価する能力です。「批判する」と聞くとネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。特に自分が「これは間違いない」「信用できる」と思っていることであっても、「本当にそうだろうか?」「他に可能性はないだろうか?」と検証する姿勢は、問題の本質を見抜いたり、より良い選択をしたりする上で非常に重要だと考えています。ニクソン大統領が言ったとされる「信用はするものの、絶対にチェックしなければならない」という言葉は、この批判的思考の本質をよく表しているように思います。
- 意思決定(Decision Making)
- 収集した情報や状況に基づいて、合理的かつ最善と思われる選択を行う能力です。ウォルト・ディズニーの創造的な意思決定プロセスは参考になるかもしれません。まずは「夢見る人」として自由にアイデアを出し、次に「現実的な人」として実現可能性を検討し、最後に「批判的な人」としてリスクや課題を洗い出す、といった複数の視点を持つことが、質の高い意思決定につながるのではないでしょうか。
- レジリエンスと対応能力(Resilience & Coping Skills)
- 困難や逆境、挫折に直面した際に、それに効果的に対処し、精神的に、そして状況から立ち直る能力(リカバリー)です。失敗からすぐに回復する力、環境の変化に柔軟に適応する力の高さを指します。事前に想定される困難への対処法や、落ち込んだ時に自分を奮い立たせる方法を用意しておくこと(リカバリーストラテジー)が、いざという時に役立ちます。安全な環境で、意図的に小さな失敗を経験し、そこから立ち直る経験を積むことも、レジリエンスを鍛える上で有効だと感じています。
- マインドフルネス(Mindfulness)
- 現在の瞬間に意識を集中し、思考や感情に評価や判断を加えず、ありのままに状況を認識する能力です。過去の後悔や未来の不安に囚われず、「今、ここ」に注意を向けることで、心の平静を保ち、目の前の状況に適切に対応できるようになるでしょう。漢字で「少年」と書くように、「今、心を一つに留める」というイメージですね。
- メンタルヘルスの知識(Mental Health Literacy)
- 一般的なメンタルヘルスの状態や、精神的な不調のサインや症状について、基本的な知識を持っていることの重要性は増しています。残念ながら、日本ではこの知識がまだ十分に行き渡っていないように感じています。法律で言えば、多くの人が知らず知らずのうちに軽犯罪を犯している可能性があるように、メンタルヘルスに関しても、誰しもが何かしらの不調を経験したり、理想とは異なる心理状態になったりする可能性はあるのではないでしょうか。たとえ診断されるレベルの精神疾患ではなかったとしても、自分自身のメンタルな状態や、周りの人の状態に気づき、適切に対処するための知識は、すべての人にとって不可欠だと考えています。(例えば、医療の世界には「勝手に解決しているがん」があるように、診断されないまま回復している心の不調もあるのかもしれません。)
- サポートリソース(Support Resources)
- 精神的な問題や困難に直面した際に、どこで、どのように助けを求めれば良いか、どのようなサポートが存在するのかを知っていることです。問題を一人で抱え込まず、適切な専門機関や信頼できる人に相談できる知識や繋がりを持っていることは、問題を乗り越える上で非常に大きな力になるはずです。誰に頼めば良いか、という知識も含まれるでしょう。
これらの要素は、それぞれが独立しているのではなく、互いに影響し合いながら、メンタルリテラシーという総合的な能力を形作っているように見えます。
今すぐ始められる!メンタルリテラシーを高める実践法
メンタルリテラシーは、先天的なものだけでなく、日々の意識や経験、トレーニングによって高めることが十分に可能です。ここでは、日々の生活の中で取り入れやすい具体的な実践法をいくつかご紹介させてください。
- 自分の感情や思考に意識を向ける時間を持つ: 短時間でも良いので、静かな時間を作り、自分が今どんな感情を感じているか、頭の中でどんな考えが巡っているかを観察する練習をしてみましょう。ジャーナリング(書くこと)や簡単な瞑想なども役立ちます。ネガティブな感情に早期に気づくことが、大きな問題になる前に対処するための第一歩になるかもしれません。
- 自分の「当たり前」を問い直してみる: 日常の中で「なぜ自分はこう考えるのだろう?」「本当にそうなのだろうか?」と、自分の考えや当たり前だと思っていることに疑問を持ってみましょう。例えば、SNSで流れてくる情報や、昔から言われている慣習などについて、少し立ち止まって考えてみるのも良い練習になるかもしれません。
- 多様な価値観に触れる機会を作る: これまであまり関わったことのない分野の書籍を読んだり、異なるバックグラウンドを持つ人々と交流してみたりすることも、新しい視点を得る上で非常に有効だと感じています。時には、自分の慣れ親しんだ環境(コンフォートゾーン)から少しだけ出て、新しい経験(旅行や趣味など)をしてみるのも良い刺激になるでしょう。
- 「安全な失敗」を経験する: 完璧を目指しすぎず、失敗しても大丈夫な小さな挑戦をしてみましょう。新しいスキルを学んでみる、普段やらないことに取り組んでみるなどです。失敗から何を学び、どう立ち直るかを経験することで、レジリエンスが鍛えられます。失敗した時のリカバリープランを事前に考えておくことも、心の準備として有効かもしれません。
- 「聞く力」を意識する: 会話の中で、自分が話したい気持ちを少し抑え、相手の話を真剣に最後まで聞く練習をしてみましょう。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーンなどからも、その人の感情や意図を読み取ろうとすることで、より深いコミュニケーションが可能になるはずです。
- 問題に直面した際の「プロセス」を意識する: 困難な問題が起きた時に、感情的に反応するのではなく、まずは落ち着いて状況を把握し、情報を集め、考えられる選択肢をリストアップし、それぞれの良い点と悪い点を比較検討する、といった段階的なプロセスを意識してみましょう。問題そのものから目を背けるのではなく、建設的に向き合う姿勢が、解決への糸口を見つける上で重要になるように思います。
- メンタルヘルスに関する正しい知識を学ぶ: インターネット上の情報だけでなく、信頼できる書籍や専門機関のウェブサイトなどで、心の健康や様々な心の状態について学んでみましょう。「自分には関係ない」と思わずに、誰にでも起こりうる可能性のあることとして知識を身につけることが、自分自身や大切な人を守ることに繋がるかもしれません。
- いざという時の相談先を確認しておく: 困った時に、家族や友人、職場の同僚、あるいは専門の相談機関など、誰に助けを求められるかを事前に確認しておきましょう。一人で抱え込まずに、適切なタイミングでサポートを求める勇気を持つことも、メンタルリテラシーの重要な一部だと考えています。
これらの実践は、どれも日々の小さな意識の積み重ねによって、少しずつあなたの中に根付いていくはずです。
他人事じゃない!メンタルヘルスと知識の重要性
「私にはメンタルの問題なんて関係ないから、この話はあまりピンとこないな…」そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、法律で言えば、ほとんどの人が気づかないうちに軽犯罪を犯している可能性があるように、メンタルヘルスに関しても、多かれ少なかれ、誰もが何かしらの心の揺らぎや、理想とは異なる心理状態を経験する可能性はあるのではないでしょうか。
例えば、強いストレスを感じやすい環境に身を置いているにも関わらず、それをストレスだと認識していなかったり、悲しい出来事があっても感情を抑圧してしまったり、あるいは自分自身の感情に気づきにくくなっていたり、といった状態は、特別なことではなく、私たちの身近でも起こりうるように感じています。たとえ診断されるレベルの精神疾患ではなかったとしても、自分自身の心の状態や、そこから生まれる行動や思考パターンを正確に理解し、必要に応じて適切に対処する知識やスキルは、すべての人にとって不可欠なのではないかと考えています。
しかし、残念ながら、日本ではメンタルヘルスに関する正しい知識が、まだまだ十分に普及していないように感じています。そのため、自分の心の状態や症状を正確に理解し、「これは変だな」「何とかしよう」と能動的に対処しようとする人が、他の国と比べて少ない傾向にあるのかもしれません。自分が「完全な健康体」だと思い込み、自身の心の状態や、そこから生じる他者との違いに目を向けないままいることは、ある意味で危険な状況と言えるかもしれません。正しい知識がないままでは、今回お話ししたようなメンタルリテラシーや、困難な状況から立ち直る力であるメンタルフィットネスを高めることも難しくなってしまうのではないでしょうか。
自分自身の心を深く理解し、適切に整えるための知識とスキルを身につけることは、今後の長い人生を、より穏やかに、そしてより豊かに生きる上で、避けては通れない大切な課題のように感じています。
まとめ:あなたの中の賢さを引き出そう
変化が目まぐるしく、先行きが予測しにくい現代において、従来のIQやEQといった知性だけでは、充実した人生を送ることが難しくなってきているように思います。これからの時代に真に求められるのは、自分と他者の心を深く理解し、そこに適切に関わっていく力、すなわち「メンタルリテラシー」ではないでしょうか。
メンタルリテラシーは、自己認識、感情調整、社会的スキル、批判的思考、意思決定、レジリエンス、マインドフルネス、メンタルヘルスの知識、サポートリソースといった、多岐にわたる要素から構成されていると考えられます。これらは、人間が本来備えている、あるいは後天的にでも育てることができる能力であり、日々の小さな意識や、意図的なトレーニング、そして様々な経験を通して高めていくことが可能です。
「なんだか生きづらいな」「人間関係がうまくいかないことが多いな」「困難に直面するとどうしたら良いかわからなくなってしまうな」そう感じることがあるなら、それはもしかすると、あなたの中に眠るメンタルリテラシーが、まだ十分に活かされていないサインなのかもしれません。
自分自身の心を知り、他者とより良く関わるための知識とスキルを磨いていくことは、あなたの人生をより豊かに、より生き生きと輝かせるための、素晴らしい第一歩となるはずです。ぜひ今日から、あなたの中にある「メンタルリテラシー」という新しい賢さに意識を向け、ゆっくりと育んでいってみてはいかがでしょうか。
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法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。
1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス&クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業(博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される(2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center)。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒 脳が断れない「無敵のセールスシステム」』(きずな出版)、共著に『仕事の教科書』(徳間書店)がある。