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脳科学×ビジネスで成果UP!人を動かす“脳の働き”5選

脳科学×ビジネスで成果UP!人を動かす“脳の働き”5選

「なぜか部下が指示通りに動いてくれない…」「マーケティングやセールスがうまくいかない…」そんなビジネス上の悩みを抱えていませんか?

近年、ビジネスの世界では、心理学や脳科学の知見を取り入れることが、より良い結果に繋がるヒントとして注目を集めています。

「人間の脳の働き」について少し掘り下げてみると、私たちが日常で直面する社内の人間関係の難しさや、どうすれば顧客の心に響くのかといった問いへの答えが見えてくることがあります。脳のメカニズムを知ることは、まるで隠された鍵を見つけるように、ビジネスの様々な場面で役立つ可能性を秘めているんですね。

本記事では、臨床心理学博士の「たか博士」が提唱されている、ビジネスで知っておくべき脳の機能の中から、特に私たちの日常業務に深く関わるポイントをピックアップし、身近な例と合わせてご紹介してみたいと思います。脳の少し不思議な世界を覗いて、あなたのビジネスをより円滑に進めるための気づきを得ていただけたら嬉しいです。

なぜビジネスにおいて「脳」を知る必要があるのか?

上司として部下へお願いしたことが、どうもスムーズに進まない。一生懸命考えて実行したマーケティングやセールスが、期待通りの成果に結びつかない…。もし、あなたがそんな経験をお持ちなら、それはもしかしたら、私たち自身の、そして周りの人たちの「脳」の働きをほんの少し理解するところから変わってくるのかもしれません。つい感情的になってしまったり、やろうと思っていたのに後回しにしてしまったり…そんな、自分でもなぜだろう?と思うような行動の裏にも、脳の働きが関係しているなんて、少し驚きですよね。

たか博士の「世界一ゆるいビジネスサイエンスチャンネル」では、ビジネスや日々の暮らしの中で役立つ心理学や脳科学のエッセンスを、とても分かりやすく伝えてくださっています。そして、ただ知識として知るだけでなく、それを実際に試してみて、その結果を観察してみるという、「ビジネスサイエンティスト」のような視点を持つことを勧めているんです。

さあ、私たちの日々のビジネスや人間関係に、どんなヒントを与えてくれるのか、脳の働きをいくつか見ていくことにしましょう。

ビジネスで知っておくべき脳の働き【前半】

1. 現状維持のメカニズム

私たちの脳には、まるで体の体温を一定に保つように、今「これが普通の状態だ」と認識した状況を、できるだけ変えずに維持しようとする働きがあるようです。これが少し面白いのは、「私ってこういう人間だ」という自己認識にも影響することがある点です。例えば、「私、生まれつき冷え性だから」と脳が強くインプットすると、本当は体を温かく保ちたいはずなのに、なぜか冷えやすい状態を無意識にキープしようとしてしまうことがあるのだとか。

これをビジネスに置き換えて考えてみると、収入の話が分かりやすいかもしれません。過去の研究によると、新卒で働き始めた頃の手取り額が、その後給料が上がったり転職して収入が増えたりしても、なぜか月末に手元に残る金額とあまり変わらない、というケースがあるそうです。これは、無意識のうちに「手取りはこのくらい」という基準が脳に設定されていて、余ったお金をマッサージやエナジードリンクなど、必ずしも必要でないものに使ってしまう傾向があるためだと言われています。まるで、知らない間に家計簿に「無意識のデフォルト設定」が書き込まれているような感覚でしょうか。

【ビジネスへの示唆】

組織全体の文化や、個人の働き方を変えたい、新しいことにチャレンジしたいと思った時、この「現状維持メカニズム」が壁になることがあります。変化を起こすためには、「新しい働き方はこうだ」「これが私たちのニュースタンダードだ」と、意図的に、そして具体的に新しい基準を脳にインプットし直すことが大切なのかもしれません。過去の成功体験や慣れ親しんだやり方から少し距離を置いて、新しい目標を明確に設定してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

2. 体を健康に保つメカニズム

私たちの脳は、体が健康であるように、一生懸命働いています。ストレスホルモンを抑えたり、体調を良い状態に保ったりしようとするんですね。風邪をひいたときの熱や鼻水、お腹を壊したときの下痢なども、実は体に溜まった不要なものや毒素を外に出して、健康な状態に戻ろうとする、体本来のメカニズムの一部だと考えられています。でも、私たちはつい薬を飲んで、これらの症状を止めようとすることがあります。これは、ある意味では体が自分で治ろうとする力にブレーキをかけている、とも見ることができるかもしれません(もちろん、重い病気や感染症の場合は、医療の助けが絶対に必要になります)。

心が疲れて「何もしたくない、ただ寝ていたい」と感じるうつ症状も、もしかしたら、体や脳が「もう限界だよ、今はとにかく休むことが一番大切なんだ」とメッセージを送っているのかもしれません。現代社会では、なかなか完全にオフにして休むのが難しいですが、無理に頑張り続けようとすると、かえって回復が遅れてしまうこともあります。軍の研究で、仕事の生産性や効率の良さは「いかに上手に休憩をとるか」にかかっている、というデータがあるのも、このことを裏付けているように感じますね。

【ビジネスへの示唆】

社員一人ひとりの心と体の健康は、長い目で見ると、組織全体の生産性や新しいアイデアを生み出す力に深く関わってくるものだと思います。単に長時間働くことをよしとするのではなく、質の良い休息やリフレッシュできる時間を確保できるような環境を整えることが、結果的に組織全体の力になるのではないでしょうか。また、もし部下や同僚が心身の不調を訴えているなら、それは単なる怠けや甘えと捉えるのではなく、体が発する「助けて」というサインとして受け止め、適切な休息やサポートが必要だと理解することが、お互いにとって良い結果に繋がる道かもしれませんね。

3. 感情を司る機能

人の感情は、思っている以上に私たちの「無意識」の領域で動いているようです。だから、怒っている人に「怒らないで」と言ってもすぐには収まらないし、元気がない人に「元気出せよ!」と声をかけても、すぐに笑顔になれるわけではないんですね。感情を自分でコントロールするためには、見たり、聞いたり、感じたり、といった五感を通じて、自分にとって心地よい、ポジティブな感情を引き出すための、自分なりの「戦略」を持つことが大切だと言われています。

タバコやお酒、甘いものがやめられない…という悩みも、もしかしたら、これらが手軽に感情を一時的に紛らわせたり、気分を変えたりする手段になっているからかもしれません。感情をポジティブな方向へ切り替えるための引き出しが少ないと、ついこのような習慣に頼ってしまいがちになるようです。

【ビジネスへの示唆】

部下や顧客の感情に寄り添い、彼らが前向きな気持ちになれるように促すためには、頭ごなしに何かを要求するのではなく、まずはその感情を理解しようとすることが第一歩になるのかもしれません。そして、言葉だけでなく、場の雰囲気や表情、声のトーン、心地よい空間作りなど、五感に訴えかける要素を意識的に取り入れてみることで、相手の感情に良い影響を与えることができるのではないでしょうか。もちろん、私たち自身がストレスを感じたときに、どのように感情を健康的にコントロールするかの「戦略」を持っていることは、日々のビジネスを乗り越える上で、きっと大きな助けになってくれるはずです。

4. 記憶の整理整頓と人格形成

私たちの脳は、たくさんの記憶を日々整理しています。特に「あの時、どこで何があった」という、時間や場所がはっきりしている記憶や、心に強く残った「エピソード記憶」は、私たちがどんな人間であるか、どんな性格を持つか、という部分に深く関わってくるようです。一方で、学校で習った英単語のように、「いつ覚えたかは覚えていないけれど知っている」という記憶は、私たちの人格形成とは少し距離があるものと考えられています。

ビジネスの世界でいう「ビジネスペルソナ」(仕事をする上での自分らしさやスタイル)も、やはり何か心に残る出来事や、成功した時の感動といった経験によって形作られていくことが多いようです。たか博士は、ビジネスがあまりうまくいかないと感じている人の中には、仕事を通じて「これができた!」「やって良かった!」と感じるような、心揺さぶられる成功体験が少ないのかもしれないと指摘されています。誰かメンターや師匠と一緒に仕事をする中で、プロジェクトが成功した時に味わう感動や一体感も、その人の「ビジネスペルソナ」を強くしていく大切な栄養になるのかもしれませんね。

【ビジネスへの示唆】

部下の成長を願うなら、単に知識やスキルを教えるだけでなく、彼らが仕事を通じて「できた!」「貢献できた!」と感じられるような、小さな成功体験でも良いので、意図的に機会を作ってあげることがとても大切になるでしょう。その成功を一緒に喜び、感情を共有することで、記憶に深く刻まれ、彼らの仕事に対する自信や前向きな姿勢(ビジネスペルソナ)を育むことに繋がるのではないでしょうか。

5. 関連性の発見が学びの鍵

人間は、「これって自分にどう関係があるんだろう?」「今知っていることとどう繋がるんだろう?」という「関連性」が見出せないと、なかなか新しいことを学ぶのが難しいようです。例えば、分からない公式を、また別の分からない公式を使って説明されても、頭の中は「???」でいっぱいになってしまいますよね。まるで、点と点がバラバラに浮いているようで、線で結びつけられないような感覚でしょうか。学びがスムーズに進むためには、既に知っている「点」と、新しい「点」を「線」で結びつける作業が必要になるのですね。

有名なコンサルティングファームのマッキンゼーでは、プレゼンテーションの準備ができているか確認する時に、「その内容をサンドイッチに例えて説明してみて」というユニークな方法を使うことがあるそうです。これは、誰もが知っている身近なもの(サンドイッチ)と関連付けて分かりやすく説明できなければ、それはまだ本当に腹落ちして理解できていない、と考えるからでしょう。

【ビジネスへの示唆】

新しい知識やスキルを教える場面や、複雑な仕事を依頼する時には、まず相手が何を知っているか、どんな経験があるかを想像してみることが役立つかもしれません。そして、教えたいことやお願いしたいことを、相手が既に知っていることや、日常で経験することと関連付けて説明してみると、相手の脳は新しい情報をスムーズに受け入れ、理解しやすくなるのではないでしょうか。抽象的な話をする時ほど、具体的な例えや、目で見て分かる図やイラストを添えることが、相手の「なるほど!」を引き出す鍵になるように思います。

6. 解決のために表面化する記憶

私たちの脳は記憶をきちんと整理しようとしますが、中にはネガティブな感情と結びついた記憶を、一時的に心の奥に「抑え込んで」しまうことがあります。でも、完全に消えてしまうわけではなく、解決を求めて、ふとした瞬間にポッと表面に現れてくることがあるそうです。突然理由もなくイライラしたり、昔の嫌な出来事を思い出して後悔したり…そんな経験はありませんか?

これは実は、脳からの「今なら、この問題を乗り越えられるかもしれないよ?」というサインなのかもしれません。脳は、その記憶を表面に出すことで、私たちに「そこから何かを学んでほしい」と促しているのだと言われています。学びとは、過去の出来事から「次にどう活かせるか」「将来どうすればもっと良くなるか」という、自分にとってプラスになる気づきを得ること。誰かのせいにしたり、ただ落ち込んだりするのではなく、その経験から未来に向けた建設的な一歩を踏み出すためのヒントを見つけられた時、脳はその記憶を安心して手放し、二度と同じことで悩まなくなる…そんな仕組みがあるようです。

【ビジネスへの示唆】

もし、部下や同僚が過去の失敗やトラブルを引きずっているように見えるなら、それは彼らの脳が、その経験から学びを得ようとしているタイミングなのかもしれません。単に「あの時はダメだったね」と指摘するだけでなく、「あの経験から、次に活かせることがあるとしたら何だろうね?」と、彼らが未来志向の学びを見つけられるように、そっと寄り添うような対話を試みてはいかがでしょうか。ネガティブな経験を、成長のための糧へと変換するサポートをすることは、個人の回復だけでなく、チーム全体の知恵にも繋がっていくように感じます。

9. 自分を守るための記憶抑圧

脳は、あまりにも辛いことや、今の自分にはとても対処できないと感じるような大きなストレスや脅威に直面した時、一時的にその記憶を心の奥深くにしまい込んで、自分自身を守ろうとすることがあります。例えば、つい最近大きなトラブルがあったのに、後でそのことについて聞いても「え、何のことですか?」と全く覚えていないような人がいるのは、その人がその出来事による心の痛みに耐えられないために、脳が意図的に記憶をシャットアウトしている現象だと言われています。これは、決してその人が無責任なのではなく、自分自身を壊れないように守ろうとする、脳の切実な働きなのですね。

【ビジネスへの示唆】

もし部下や同僚が、明らかな問題やトラブルについて、話そうとしなかったり、記憶が曖昧だったりする場合、それは彼らがその状況から自分を守ろうとしているサインかもしれません。そのような時は、無理に追及したり、問い詰めたりするのではなく、彼らの心の状態を理解し、安心して話せるような、温かい姿勢で接することが大切ではないでしょうか。彼らが「ここなら大丈夫だ」と感じられた時、少しずつ心を開き、問題解決に向けて前向きな一歩を踏み出せるようになる、そんな可能性もあるように思います。

ビジネスで知っておくべき脳の働き【後半】

10. モラル性の高さとルールの見直し

私たちの脳は、集団で生きる生物として、「正しいこと」をしたい、集団のルールを守りたい、という傾向があるようです。生まれたばかりの頃から、周りの大人を見て、何が良くて何が悪いかを学び、それを自分の中にインプットしていきます。でも、「正しい」と思ってずっと続けていることが、時代とともに「最適」ではなくなってしまう、ということも起こりえます。

有名な例に「ひばあちゃんのハム」の話があります。ハムを焼く前に両端を切り落とすという習慣が代々伝わっていた家で、孫が理由を尋ねていくと、元々はひばあちゃんの時代にオーブンが小さくてハムがそのままでは入らなかったから、という理由だったそうです。つまり、理由を知らずに「正しい」こととして引き継がれていた習慣が、本来の目的を失ってしまっていたんですね。

【ビジネスへの示唆】

あなたの会社やチームで行っている仕事のやり方やルールの中に、「なぜこうしているんだっけ?」と理由が分からなくなっているものはありませんか?それは、かつては最善の方法だったかもしれませんが、今は状況が変わって、見直す必要があるものかもしれません。まるで、古くなった地図を頼りに進んでいるようなものですね。組織のルールや方針は、一度作ったら終わりではなく、状況に合わせて柔軟にアップデートしていく必要がある、ということを前提としておくことが、変化の速い現代を生き抜く上で、とても大切な考え方になるのではないでしょうか。定期的に「なぜこれをやっているんだっけ?」と立ち止まって問い直す時間を持つことは、無駄をなくし、より良い方法を見つけるきっかけになるように思います。

11. 貢献意欲と明確な指示の必要性

ウォルト・ディズニーは、彼のテーマパークで働くキャストたちを見て、「怠けている従業員なんて一人もいない。問題は、彼らが『何をすれば良いのか』『どのレベルを求められているのか』、そして最も大切な『なぜそれをやるのか』を知らないことだ」と言ったそうです。人間は本来、「誰かの役に立ちたい」「貢献したい」という気持ちを持っている生き物なんですね。

でも、指示が「トイレをピカピカにしておいて!」のように抽象的すぎたり、「どこまで綺麗にすればいいの?」と具体的な目標や期待されるレベルが分からなかったりすると、どう動いて良いか分からず、立ち止まってしまいがちです。また、「なぜその作業が必要なのか」(目的)が分からずに、ただマニュアル通りにやっているだけだと、「これって意味あるのかな?」と感じて、モチベーションが下がったり、勝手にやり方を変えてしまったりすることもあります。レストランで、誰も座っていない綺麗なテーブルをもう一度拭く作業も、その目的が単なる清掃ではなく「お客様への清潔さのアピール」という「ショウマンシップ」の一環だと理解できていなければ、無駄な作業に感じてしまうのも無理はないですよね。

【ビジネスへの示唆】

部下やチームメンバーに何かをお願いする時は、単に「何をやってほしいか」だけを伝えるのではなく、その「目的」(なぜそれをやるのか、それが全体の中でどんな意味を持つのか)や、「期待するレベル」(どのくらい完璧に、いつまでに、といった具体的なゴール)も合わせて伝えることが、彼らの「貢献したい」という気持ちを引き出し、主体的に動いてもらうためにとても大切になるでしょう。マニュアルや指示書に「なぜ」の部分を付け加えるだけで、受け取る側の納得感ややる気は大きく変わるかもしれませんね。

12. 全てを個人的に受け取る傾向

私たちの脳は、良くも悪くも、目の前で起きていることや耳にした言葉を、無意識のうちに「自分自身に関係があることだ」と捉えてしまう傾向があるようです。GE(ゼネラル・エレクトリック)の新入社員研修で「Don’t take it personal(個人的に受け取るな)」と教えられるのも、この脳の性質を知っているからかもしれませんね。誰かが愚痴を言っているのを聞くと、まるで自分が責められているように感じたり、逆に誰かが褒められているのを見ると、自分まで嬉しくなったり…そんな経験、ありませんか?

仕事で改善点を指摘された時も、「これは私の人間性に対する批判だ」と個人的な攻撃として捉えてしまうと、辛く感じてしまいます。パワハラやセクハラのように感じるケースの中には、指摘の内容が業務に関することでも、受け取る側が個人的な攻撃として捉えてしまうことで、問題が大きくなってしまうこともあるようです。これは、「今回のフィードバックは、あくまでこの業務の成果物に対するもので、あなた自身を否定するものではありません」という、言葉の「フレーム」(前提)が不足しているために起こりやすいのかもしれません。

また、私たちは周りの人たちの影響をとても強く受けます。「あなたは最も一緒にいる時間の長い5人の平均値になる」という言葉があるように、ネガティブな発言が多い環境にいると、自分も落ち込みやすくなったり、自分自身がダメな人間だと感じてしまったりすることがあるようです。逆に、周りが前向きな言葉を交わしている環境にいると、自然と自分もポジティブな影響を受けやすくなりますね。

【ビジネスへの示唆】

誰かにフィードバックや改善の依頼をする際は、それが個人的な評価ではなく、あくまで「業務について」のものであることを、言葉や態度で明確に伝える配慮が大切になるでしょう。また、チーム内でのコミュニケーションにおいて、互いを尊重し合い、建設的でポジティブな言葉を選んで話すことを心がけるだけで、職場の空気は大きく変わるように感じます。お互いが安心して自分の意見を言えたり、成長のためのフィードバックを受け入れられたりするような、心理的な安全性のある環境を作ることは、チーム全体のパフォーマンスを高める上で、とても重要な要素になるのではないでしょうか。

13. シンボルの理解力

考えてみれば、私たちが普段使っている言葉(日本語や英語など)の歴史は、人間の脳の進化の歴史全体から見ると、ごく最近の出来事です。ずっと昔から、脳は身振り手振り(ボディランゲージ)や、壁に描かれた絵、図といった「シンボル」で物事を理解することに慣れ親しんできました。

工場などで、機械の操作方法や危険な場所を示すのに、文字だけでなくイラストやマークが多用されているのを見かけますよね。これは、絵や図の方が瞬時に、直感的に意味を理解しやすいからです。営業資料やマーケティングのプレゼンテーションでも、文字ばかりのスライドよりも、分かりやすい図やグラフ、イラストが効果的なのは、私たちの脳がシンボルでの情報処理を得意としているからなんですね。複雑な情報を伝える時ほど、シンプルな絵や図で表現することを意識してみると、相手の理解度がぐっと深まるかもしれません。

【ビジネスへの示唆】

社内でのマニュアル作成や、顧客への提案資料、プレゼンテーションなどで、伝えたい内容を文字だけで説明しようとしていませんか?少し立ち止まって、「これは図で表せないかな?」「どんなイラストを添えると分かりやすいだろう?」と考えてみることは、情報の伝達効率を大きく高めることに繋がるでしょう。視覚的なシンボルを積極的に活用することで、相手の脳は情報をスムーズに受け入れ、内容が記憶に残りやすくなるはずです。

14. 否定形が理解しづらい性質

人間の脳は、「〜してはいけない」「〜するな」といった否定形の言葉を、実は少し苦手としているようです。プログラミングで考えると分かりやすいのですが、「走るな」という命令は、まず「走る」という行動を認識し、その後に「それをしない」という打ち消しの処理をしようとします。結果として、まず「走る」というイメージが頭に浮かんでしまうんですね。子どもに「走るな」と言うと、かえって走り出してしまうことがあるのは、この脳の働きと関係があるのかもしれません。「失敗するな」と部下にプレッシャーをかけると、かえって「失敗」を強く意識してしまい、その可能性を高めてしまう…なんて皮肉な結果に繋がることもあります。

脳は、求めている結果や行動を、直接的で肯定的な言葉で伝えられた方が、スムーズに理解し、行動に移しやすい性質を持っているようです。

【ビジネスへの示唆】

部下やチームメンバーに何かを依頼したり、アドバイスをしたりする時は、否定的な言葉を避けて、「どうなってほしいか」「どんな行動を取ってほしいか」を肯定的な言葉で伝えてみてはいかがでしょうか。「ミスをしないように」ではなく「確認を丁寧にしよう」、「遅刻するな」ではなく「開始時間には席にいよう」のように、望ましい状態や行動を具体的に示すことが大切だと思います。ポジティブな言葉を選ぶことは、相手のモチベーション維持にも繋がるでしょう。

15. 知覚五感のコントロールと維持

私たちの脳には、一度特定の感覚(物を見たり、音を聞いたり、何かを感じたりする能力)を習得すると、それを継続して保つことができる、という面白い機能があるようです。例えば、長年経理の仕事をしている人が、Excelの数字を見ただけで、桁数の間違いや計算ミスにすぐ気づけるのは、日々の仕事を通じて数字を見る「知覚」が非常に研ぎ澄まされているからです。

経験の浅い人が、ベテランが見えている問題点やチャンスに気づけないのは、この「認知能力」の違いが大きいと言えるでしょう。特定の分野のプロフェッショナルは、その分野に関わる情報を受け取る「アンテナ」が、一般の人よりもずっと敏感になっているイメージですね。

【ビジネスへの示唆】

社員の育成を考える際、単に知識や業務手順を教えるだけでなく、その仕事で「何に注目すべきか」「どんなサインに気づくべきか」といった、仕事に必要な「知覚」を意図的に磨く機会を提供することが、彼らの成長を加速させるかもしれません。ベテランがどのように情報を見極め、判断しているのかを具体的に示したり、実際の状況に近いシミュレーションを繰り返したりすることで、彼らの「プロの目」を育んでいくことができるのではないでしょうか。

16. エネルギーの生成・配布・変換

私たちの脳は、体が活動するためのエネルギーを作り出し、蓄え、必要な場所に分配し、形を変えるという、まるで小さな発電所のような働きをしています。「さあ、今日一日頑張るぞ!」と頭で意識しても、体がついていかない時があるのは、このエネルギーの管理が、私たちの意志とは別の、脳の無意識的な機能に委ねられている部分があるからかもしれません。

脳が効率よくエネルギーを作り出すためには、過度なストレスを減らしたり、自分が心からやりたいと思えることや、強い興味を持てることに意識を向けたりすることが大切だと言われています。やる気やモチベーションといったものも、この脳のエネルギー管理と深く関わっているんですね。

【ビジネスへの示唆】

社員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、彼らがストレスを溜めすぎないような環境作りや、仕事に「やりがい」や「楽しさ」を見出せるような、目標設定や業務内容の工夫がとても重要になるでしょう。彼らが「これなら頑張れる!」と感じられるような、脳のエネルギーをポジティブに引き出すアプローチを考えることは、組織全体の活力に繋がるのではないでしょうか。

17 & 18. 本能と習慣、反復の重要性

人間の「本能」は簡単に変えられるものではありませんが、「習慣」は、私たちの意志で作っていくことができます。そして、新しい習慣を身につけるためには、「反復」がどうしても必要になってくるんですね。一度だけ経験しただけで、完全にマスターできることは、残念ながらほとんどありません。

ただ、中には一度の経験で驚くほどすぐに習得してしまう人もいます。これは、その人が実際にやる前に、頭の中で何度も「視覚的リハーサル」を繰り返していたからかもしれません。誰かの作業をじっと観察したり、手順書を読みながら頭の中でシミュレーションしたりすることも、脳にとっては大切な「反復練習」になっているのですね。

【ビジネスへの示唆】

新しいスキルや業務フローを部下に習得してもらうには、繰り返し練習する機会を設けることが大切です。単に説明するだけでなく、実際にお手本を見せたり(視覚的リハーサルを促す)、彼ら自身に何度も実際にやってもらったり(実践的な反復)と、インプットとアウトプットの両面で反復を取り入れることが、効率的な習得に繋がるでしょう。

19. 最初能力(怠惰)の法則

私たちの脳は、基本的に「怠惰」な性質を持っている、と言われています。ステップが多かったり、複雑で難しそうに見えるタスクは、見ただけで「うわ、面倒くさいな…」と感じて、取り掛かるのが億劫になってしまいがちです。脳は、できるだけ少ないエネルギーで目的を達成しようとします。

【ビジネスへの示唆】

部下にお願いする仕事のプロセスや、作成するマニュアルは、できるだけシンプルで分かりやすいものにすることを心がけましょう。複雑なタスクは、小さなステップに分解して、最初の一歩目を踏み出しやすいように工夫することが大切です。脳の「面倒くさがり」な性質を理解して、抵抗なく取り組めるようにハードルを下げてあげることが、スムーズな業務遂行に繋がるのではないでしょうか。

20. より多くを探す欲求

私たちの脳は、何か価値のあるものや、良いものを見つけると、「もっと欲しい」「もっと知りたい」と、より多くを探求するようにプログラムされているようです。まるで、美味しいものを見つけたら、もっと食べたくなるような感覚でしょうか。

【ビジネスへの示唆】

マーケティングやセールスにおいて、顧客に商品の魅力やメリットを伝える際は、そこで終わりにするのではなく、関連するオプションやアップグレード、他の関連商品など、さらなる価値の可能性を提示してみることが効果的かもしれません。顧客の「もっと多くが欲しい」という脳の欲求を刺激することで、次の行動や購買へと繋がるきっかけを生み出せる可能性があるでしょう。

21. 統合された状態がベスト

「会社にいる時と家にいる時で、まるで別人みたい」というように、場所や状況によって自分のキャラクターが大きく変わってしまう人は、脳が「統合」されていない、つまり自分の中で一貫性がない状態にあると考えられます。このような状態は、心に負担がかかりやすく、ストレスが溜まりやすい傾向があるようです。ビジネスの場でも、プライベートでも、自分の中の核となる部分はあまり変わらず、基本的に同じような自分でいられることの方が、心身の安定にも繋がり、結果として安定したパフォーマンスを発揮しやすくなるのではないでしょうか。

【ビジネスへの示唆】

社員が、会社にいる時も、自分自身の価値観や人間性をあまり偽る必要がない、心理的に安全でオープンな職場環境を築くことは、彼らが自分らしく働くことに繋がり、エンゲージメントを高める上で非常に重要になるでしょう。多様な個性を受け入れ、それぞれが持つ独自の良さを活かせるような文化を育むことは、チーム全体の居心地の良さや、持続的な成長に貢献するかもしれません。

まとめ:脳を知ることがビジネス成功の鍵

ここまで、たか博士がご紹介されている「ビジネスで知っておくべき脳の働き」の中から、私たちの仕事や人間関係に深く関わるいくつかのポイント(ソースに基づいて抜粋・構成)を見てきました。

「脳」の働きを知るということは、単に難しい専門知識を学ぶことだけではないように感じます。それは、なぜあの人はあんな行動をとるのだろう?なぜ自分はこう考えてしまうのだろう?といった、日常の疑問の背景にある、私たち人間の、そして周りの人たちの行動や心のメカニズムを理解するための、とても興味深い入り口なのかもしれませんね。

なぜ部下が動かないのか、なぜ顧客の心に響かないのか、なぜ自分自身が特定の状況で苦手意識を感じるのか…。これらの問いに対するヒントは、意外と私たちの「脳」の中にあるのかもしれません。

この記事で触れた脳の働きを参考に、ぜひ今日からでも、あなたのビジネスシーンや、家族や友人とのコミュニケーションの中で、小さな「実験」を始めてみてはいかがでしょうか。言葉のかけ方を変えてみる、情報を見せる工夫をしてみる、休憩の取り方を見直してみる。そして、その時にどんな変化があったかを、少し意識して観察してみるのです。

私たちの脳の仕組みを知り、それを日々の実践にほんの少しでも応用していくことで、今まで見えなかった新しい道が開けたり、乗り越えられなかった壁を越えられたりするかもしれません。

この記事が、あなたが「ビジネスサイエンティスト」として、脳の面白さを探求し、それを仕事や人生に活かしていくための一歩となることを、心から願っています。

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執筆者
遠藤 貴則法廷臨床心理学博士 Takanori K. Endo

法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。

1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス&クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業(博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される(2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center)。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒 脳が断れない「無敵のセールスシステム」』(きずな出版)、共著に『仕事の教科書』(徳間書店)がある。

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