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意思決定バイアスに騙されるな!管理職が陥る心理トラップ5選

意思決定バイアスに騙されるな!管理職が陥る心理トラップ5選

はじめに:なぜ“論理的なはずの管理職”が判断を誤るのか?

管理職やリーダーは、日々大小さまざまな意思決定に迫られています。人材採用、戦略変更、取引判断など──判断力がビジネス成果を左右する場面は多いでしょう。

ところが、論理的に考えているつもりでも、実際には「感情」や「無意識の偏り(バイアス)」によって判断が歪められているケースが非常に多いのです。これは個人の資質の問題ではなく、人間の脳の“仕様”とも言えます。

遠藤貴則博士(行動経済学・意思決定研究)の視点を借りながら、今回は「管理職が無意識に陥りやすい意思決定バイアス5選」とその対策を紹介していきます。

バイアス1:アンカリング効果|最初に見た情報に縛られる

「前任者は1000万円で契約していたから、うちもそのくらいが妥当だろう」

これはアンカリング(Anchoring)という典型的な認知バイアスです。人は最初に提示された数字や情報に強く影響され、それを基準として以後の判断を下してしまいます。

対策:複数の視点・相場から判断する

  • 他社事例、過去の実績、顧客ニーズの3軸で比較検討する
  • 最初の「アンカー」が妥当かどうかを常に疑う姿勢を持つ

バイアス2:確証バイアス|自分の信じたい情報ばかり集める

「やっぱりうちの方向性で間違ってなかった。そう書いてある記事もあったし」

確証バイアスとは、自分の仮説や意見を裏付ける情報ばかりを探してしまい、反証となるデータを無視する心理です。

対策:意識的に“逆の立場”の意見を取り入れる

  • ディベート方式の会議を取り入れる
  • 第三者レビューを受ける文化をつくる

バイアス3:正常性バイアス|「まあ大丈夫だろう」の慢心

「市場の変化?うちはこれまで通りでやっていけるよ」

危機や変化に対して「自分は大丈夫」「まだ何とかなる」と思い込む心理的防衛反応。特に経験値の高い管理職ほど陥りやすい。

対策:定期的な“変化チェック”と意思決定フレームを導入

  • 四半期ごとの「変化レビュー会議」などを設ける
  • 「最悪のシナリオ」をあえて想定し、チームで議論する

バイアス4:現在バイアス|目先の利益を優先してしまう

「今月の売上がまずいから、とりあえずキャンペーンやっちゃおう」

短期的な成果を優先しすぎることで、中長期のブランド価値や信頼を損なう可能性がある意思決定です。

対策:中長期の目的とセットで判断軸を持つ

  • 「短期・中期・長期」視点での意思決定フレームを導入
  • KPIと合わせて“LTV(顧客生涯価値)”も常に併記する

バイアス5:損失回避バイアス|損を避けるためにチャレンジを避ける

「今やっている施策をやめるのはもったいないから、もう少し様子を見よう」

人は「得をすること」よりも「損を避けること」に強く反応します。これにより、明らかに効果のない戦略を“継続”してしまうことが多発します。

対策:数字と事実で継続判断を行う仕組み化

  • 毎月の定例で「やめるべきこと会議」を行う
  • 感情ではなく、効果指標・成果率で継続/撤退を判断する

遠藤貴則からの提言|バイアスを“消す”のではなく“環境で整える”

人はバイアスから逃れられません。でも、判断がズレにくい“環境”は設計できます。

つまり、個人の努力でバイアスをゼロにすることは不可能でも、組織として「バイアスに強い環境=思考のクセに気づける構造」を整えることは可能だということ。

これは、ナッジ理論や行動経済学の基本的なアプローチでもあります。「行動を変えるには、仕組みを変える」──管理職にとってこそ最も必要な視点です。

まとめ:バイアスを理解することが“最強のリスクヘッジ”になる

意思決定ミスは、経営にとって最大のコストになり得ます。

しかし、「自分もバイアスにかかっているかもしれない」と気づき、チェックリストやフレームで環境を整えておくだけで、判断の精度は劇的に上がります。

あなた自身、そしてあなたのチームの意思決定を守るために、まずはこの5つのバイアスを“意識すること”から始めてみてください。

執筆者
遠藤 貴則法廷臨床心理学博士 Takanori K. Endo

世界40ヵ国以上から累計23万人以上が受講する国際的スピーカー、トレーナー、元アルビズ大学准教授。

アメリカ、オレゴン州のルイス&クラーク大学で心理学で学士を取り、フロリダ州のアルビズ大学にて心理学の修士と臨床心理学、法廷特化の博士号を取得。2015年にオレゴン州の臨床心理学者としての国家治療免状を得る。過去にアメリカ心理学会、国際心理学会、アメリカ法廷心理学会など数多くの学会で研究を発表している。

日本帰国後は日々実践できる科学をテーマにニューロマーケティング(神経マーケティング)、教育学、経営学、統計学などを教え述べ23万人以上の講演会を開催。

プロフィール詳細はこちら

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