LINE友だち追加 お問合わせ

「損したくない」が行動を決める?行動経済学からひも解くつい買っちゃう心理

「損したくない」が行動を決める?行動経済学からひも解くつい買っちゃう心理

「つい買ってしまうのは、意思が弱いから…?」そんな風に自分を責めていませんか?

実はその行動、多くの人が持つ「損したくない」という心理が原因かもしれません。本記事では、行動経済学の視点からなぜ買ってしまうのかを解説します。

行動経済学とは?「つい買っちゃう心理」の正体

行動経済学の基本と「合理的でない人間」

行動経済学は、私たちが日常で行う「非合理的」な選択を解明する学問です。

​伝統的な経済学では、人間は常に合理的に行動すると仮定されてきましたが、実際には感情や直感に左右されることが多いのです。​

例えば、必要のない商品を衝動的に購入したり、セール品に飛びついたりする行動は、合理的とは言えません。​

行動経済学は、こうした人間の行動パターンを理解し、予測するための理論や実験を通じて、私たちの意思決定の仕組みを明らかにします。​東証マネ部!note(ノート)識学総研識学総研

なぜ“損したくない”と感じるのか?損失回避バイアスの正体

「損失回避バイアス」とは、人が利益を得る喜びよりも、損失を避けることに強く反応する心理的傾向を指します。​

研究によれば、同じ金額でも、損失の痛みは利益の喜びの約2倍強く感じられるとされています。​

このため、私たちは「損をしたくない」という気持ちから、セールや限定キャンペーンなどに惹かれやすくなります。​

このバイアスは、購買行動だけでなく、投資や保険の選択など、さまざまな意思決定に影響を与えています。​ITカウンセリングLab呉文治大学MONEY PLUS | くらしの経済メディア

セールやポイントに弱いのはなぜ?感情と判断の関係

セールやポイントキャンペーンが私たちの購買意欲を刺激するのは、感情と判断が密接に関係しているからです。​

「今だけ」「限定」「お得」といった言葉は、私たちの感情に訴えかけ、理性的な判断を鈍らせます。​

このような状況では、必要性よりも「損をしたくない」という感情が優先され、結果として衝動的な購入につながることがあります。

​感情が判断に与える影響を理解することで、より賢明な消費行動を取ることが可能になります。​

行動経済学は、私たちの非合理的な行動を理解し、より良い意思決定をするための手助けとなります。

​「損をしたくない」という感情がどのように購買行動に影響を与えるのかを知ることで、無駄な出費を避け、賢い消費者になる第一歩を踏み出せるでしょう。​

私たちが無意識に反応する心理トリガー

プロスペクト理論で読み解く消費者行動

私たちが「損をしたくない」と感じる心理は、プロスペクト理論で説明できます。

​この理論によれば、人は利益を得るよりも、損失を避けることに強く反応します。​たとえば、確実に50ドルを得る選択肢と、50%の確率で100ドルを得るが、50%の確率で何も得られない選択肢がある場合、多くの人は前者を選びます。

​しかし、確実に50ドルを失う選択肢と、50%の確率で100ドルを失うが、50%の確率で何も失わない選択肢がある場合、多くの人は後者を選びます。​

これは、損失を避けたいという心理が働いているためです。​Invesp

フレーミング効果が印象を変える理由

フレーミング効果とは、「同じ意味の情報でも、伝え方(=フレーミング)によって人の印象や判断が変わってしまう」という心理現象のことです。

私たちは情報の内容だけでなく、どう表現されているかにも強く影響を受けています。

たとえば、スーパーで売られている牛肉のラベルに、「80%赤身」と書いてある場合と、「20%脂肪」と書いてある場合、中身はまったく同じ牛肉でも、多くの人が「80%赤身」と書かれたほうをより健康的でよさそうと感じる傾向があります。

これは、「赤身=健康的」「脂肪=体に悪そう」といったイメージが、言葉の選び方によって引き出されてしまうからです。

このフレーミング効果は、世界的に有名な心理学者ダニエル・カーネマン博士とエイモス・トヴェルスキー博士による実験でも確認されています。

彼らの研究では、次のような質問が行われました。

「この手術は成功率が90%です」と聞いた場合と、「この手術は失敗率が10%です」と聞いた場合、成功率も失敗率も内容としては同じことを意味しているにも関わらず、前者のほうが多くの人に「やってもよさそう」と思われたのです。

つまり、人は数値やデータよりも「言い回し」や「イメージ」に左右されやすいのです。

これは、広告やニュース、商品説明、政策発表など、あらゆる情報の伝え方に活かされているテクニックでもあります。

この効果を理解しておくことで、私たちは表面的な言葉に惑わされず、冷静に中身を判断できるようになります。
Kahneman, D., & Tversky, A. (1981). “The framing of decisions and the psychology of choice”, Science, 211(4481), 453–458.
The Framing of Decisions and the Psychology of Choice | Science

アンカリング効果が価格判断を左右する仕組み

アンカリング効果とは、「最初に見た情報(数字など)が、その後の判断に強く影響を与える」という心理現象です。

買い物をするとき、人は最初に見た価格や情報を基準(アンカー)として記憶し、それ以降の判断をその基準と比べて行います。

たとえば、次のような表示を見たことはありませんか?

  • 「通常価格10,000円 → 今だけ6,800円」
  • 「参考価格20,000円の商品が、セールで12,000円」

このとき、6,800円や12,000円という金額が本当に安いかどうかを考える前に、「もともと高かったものが安くなっている」と無意識に感じてしまいます。

これは、最初に提示された10,000円や20,000円という数字がアンカー(基準)として記憶に残り、それよりも低い価格がお得に見えるからです。

このような効果は、商品だけでなくサービスやプランの価格にも多く活用されています。

たとえば、3つの価格帯を並べて「真ん中を選ばせる」ように誘導する場合も、最初に高い価格を見せておくことで中間価格が妥当に思えるような心理的操作がされています。

このアンカリング効果については、多くの心理学者や経済学者が実験で確かめており、アメリカの著名な心理学者ダニエル・カーネマン博士らによる研究でも、日常的に人はこの影響を受けていることが報告されています。(出典:Daniel Kahneman, “Thinking, Fast and Slow”, 2011)

この効果を知っておくことで、広告やセールに惑わされず、「その価格は本当に妥当なのか?」と冷静に判断することができるようになります。

買い物をするときは、最初に目にした数字に過剰に引きずられないよう、少し立ち止まって考えることが大切です。

つい買っちゃうの実例と企業戦略

スーパーやコンビニでよくある販売テクニック

私たちが日常的に訪れるスーパーやコンビニでは、消費者の心理を巧みに利用した販売戦略が数多く展開されています。​

例えば、店舗の入り口に新鮮な果物や野菜を配置することで、健康的な選択をしたという満足感を与え、その後の高カロリーな商品の購入への罪悪感を軽減させる効果があります。​

また、牛乳や卵などの必需品を店舗の奥に配置することで、消費者が他の商品を目にする機会を増やし、衝動買いを促進します。​

さらに、棚の配置にも工夫があり、子供の目線の高さに甘いシリアルを配置することで、親に対して購入をねだる行動を引き出します。​The Sun

加えて、音楽や照明といった「感覚刺激」も消費者心理に強く働きかけます。

たとえば、店内に穏やかなBGMを流すと、滞在時間が延び、より多くの商品に目が留まりやすくなることが知られています。

また、試食コーナーは「味覚の先取り体験」を提供することで購入意欲を高め、特に新商品や高価格帯の商品に有効です。

このように、視覚・聴覚・嗅覚・味覚といった複数の感覚を活用する「マルチセンサリーマーケティング」は、消費者の購買行動を自然に導くための重要な手法となっています。

これらの戦略は、消費者の無意識の行動を誘導し、購買意欲を高めるために設計されています。​Spence, C. (2015). Multisensory Flavor Perception. Cell Press

通販やECサイトで仕掛けられた心理操作とは?

オンラインショッピングの世界でも、消費者の心理を利用した戦略が数多く存在します。

 例えば、価格を「9.99ドル」のように設定する「チャームプライシング」は、消費者に実際の価格よりも安く感じさせる効果があります。

 また、期間限定のセールや在庫の少なさを強調することで、「今買わなければ損をする」という焦りを引き出し、購買を促進します。

 さらに、無料体験や初回限定の割引なども、「お得感」を強調することで購入のハードルを下げる効果があります。​​netsuite.comAureate Labs

加えて、多くのECサイトでは「ソーシャルプルーフ(社会的証明)」という心理効果も活用されています。たとえば「この商品は過去24時間で200人が購入」や「レビュー評価★4.8(1,532件)」といった表示は、他人が選んでいるから安心・信頼できるという気持ちを引き出します。


これは、人が判断に迷ったとき「多数派の行動に従う」という本能的傾向を持っているからです。
このように、ECサイトでは複数の心理的トリガーを組み合わせて、消費者の無意識の判断に働きかけ、購買行動を後押ししているのです。

Top 12 Psychological Pricing Strategies To Convince Customers Cialdini, R. (2009). Influence: Science and Practice.

有名企業のマーケティングに見る行動経済学の応用

多くの大手企業は、行動経済学の理論をマーケティング戦略に取り入れ、消費者の行動を巧みに誘導しています。​例えば、Appleは製品のデザインや店舗の雰囲気を通じて、消費者に特別な体験を提供し、ブランドへの忠誠心を高めています。​

また、Xiaomiは新製品の在庫を意図的に制限することで、希少性を演出し、消費者の購買意欲を刺激しています。​

さらに、Amazonは「あと少しで送料無料」といったメッセージを表示することで、消費者に追加の商品を購入させる戦略を採用しています。​

これらの企業は、消費者の心理を深く理解し、その行動を予測・誘導することで、売上の向上を実現しています。​​WIRED

日常生活に潜む“損したくない”心理の落とし穴

本当に必要?「お得感」で失敗する買い物パターン

「今買わないと損」と感じる場面、あなたにもきっと心当たりがあるはずです。

セール、タイムセール、ポイント倍付けなどは、私たちの「損したくない」という心理を巧みに利用しています。

こうした行動は「損失回避バイアス」と呼ばれ、人は利益よりも損失の回避を強く意識するという傾向があります。

たとえば、2,000円の商品が「本日限定で半額」と書かれていたら、実際にはその商品を必要としていなくても、「今買わなければ損」と感じてしまい、ついレジへ向かってしまうのです。

内閣府の「消費動向調査(2024年版)」でも、「購入理由がお得だったから」という回答は全世代で上位に入り、価格よりも「損しないこと」を重視する傾向が広がっていることがわかっています。統計表一覧:消費動向調査

こうした現象は日常の買い物だけでなく、保険の加入や高額商品の購入にも影響を及ぼします。

「買わなきゃ損」と思ったときこそ、一呼吸おいて「本当に必要か?」と自問する習慣が大切です。

心理的バイアスに振り回されないための思考法

損失回避やお得感に左右されずに賢く買い物をするには、「感情」と「事実」を分けて考える視点が必要です。

心理的バイアスを避けるためのポイントは以下の通りです。

  • セール品を見たとき、「本当に必要なものか?」と問い直す
  • 割引率ではなく、元の値段と比較して価値を判断する
  • 「限定」「残りわずか」に対して、時間をおいて考える癖をつける

また、「買わないことで何が失われるか」ではなく、「買わなかったことで得られる余裕(お金・時間)」に目を向けることで、冷静な判断がしやすくなります。

脳科学的にも、感情が高ぶっているときは前頭前皮質の働きが低下し、論理的な判断がしにくくなることが示されています。心理学ワールド 88号 バーチャルリアリティの広がり バーチャルリアリティと感情

つまり、時間をおいて冷静になることで、損得の判断は本来の精度を取り戻すのです。

自分の感情を客観視する「メタ認知」の力を育てることで、衝動的な買い物から徐々に抜け出すことができるようになります。

これは日々の実践で少しずつ身につけられます。

マーケティングへの応用:消費者心理を味方につける

広告・コピーに活かす行動経済学の考え方

行動経済学の知見は、広告やキャッチコピーにも効果的に応用されています。

特に「損失回避」の心理を活かすことで、商品やサービスの魅力をより強く伝えることができます。

たとえば、「〇〇を買うとお得」よりも「今買わないと損」というコピーのほうが、消費者の関心を引きやすい傾向があります。これは損を避けたいという人間の本能に訴えているからです。

また「残り○個」「限定○日」などの訴求は、選択を急がせる「希少性バイアス」や「フレーミング効果」に基づいており、購買意欲を高めることがわかっています。

​GMOリサーチ&AIが2024年に実施した調査によると、広告に「No.1」と記載されていると、約6割(58.7%)の消費者がその商品に注目し、購入意欲が高まると回答しています。これは、キャッチコピーや見出しが消費者の購買行動に大きな影響を与えることを示しています。​ネットショップ担当者フォーラム

このように、広告の見出しやキャッチコピーは、消費者が商品に注目するきっかけとして非常に重要です。​

特に「No.1」などの表現は、商品やサービスの信頼性や人気を示す指標として機能し、購買意欲を刺激します。これは、適切な心理効果を使った表現が、購入行動につながりやすいことを示しています。

このように、感情に寄り添った表現で「行動を促す」コピーは、無理に売り込むよりも、自然な流れで商品に興味を持ってもらう有効な方法といえます。

売れる価格のつけ方とは?行動経済学的アプローチ

価格設定にも、行動経済学の知見は多く活用されています。

特に「アンカリング効果」や「端数価格(1,980円など)」は、実際の価値より“お得感”を演出するテクニックとして有名です。

「アンカリング効果」とは、最初に提示された情報が基準になり、それ以降の判断に影響を与える心理現象のことです。たとえば、10,000円の商品を見せた後に5,000円の商品を見せると、5,000円が「安く感じる」のはこの影響です。

このような価格の設定方法は、コンビニやスーパーだけでなく、ECサイトやサブスクリプサービスでも広く使われています。さらに「価格を数字で伝える」より、「1日たったの○○円で使える」と表現するほうが、感覚的に支払いの負担が軽く感じられ、購入意欲を高めることができます。

以上のように、行動経済学に基づいた価格設計や広告表現を取り入れることで、消費者の無意識に働きかける「選ばれる仕組み」をつくることが可能です。

これは、売り手・買い手の両者にとって納得感のある購買体験につながる重要な視点です。

まとめ:行動経済学を知ると“買い物”が変わる

 消費者として賢くなるために知っておくべきこと

行動経済学を学ぶことで、日常の「つい買っちゃう」行動の裏側にある仕組みが理解できるようになります。

たとえば、「今買わないと損するかも」と感じる心理には、「損失回避バイアス」や「プロスペクト理論」が働いています。

人間は得をすることよりも、損を避けたいという気持ちが強く、この本能に訴えるマーケティングが多用されているのです。

実際に、内閣府の「国民生活に関する世論調査」でも、「安くなっているから」という理由で予定外の買い物をした経験がある人が約6割にのぼっています。内閣府 世論調査

これは、「価格」より「損を回避する行動」が人の選択を左右することを示しています。

このような心理的なトリガーを知っていれば、無意識の消費行動に流されず、必要なもの・本当に価値のあるものを選び取れるようになります。

知識があるだけで、選択が変わるのです。

企業側が心がけるべき誠実な心理設計とは

企業が行動経済学を使う際に大切なのは、「売るためのテクニック」だけに偏らないことです。

消費者の感情や無意識に影響を与えるからこそ、設計には倫理観と誠実さが求められます。たとえば、過度に不安をあおる表現や、選択肢を誤認させるような価格表示は、信頼を失う原因になります。

逆に、顧客の「選びやすさ」や「安心感」に寄り添った設計は、長期的なブランド信頼につながります。国内でも、消費者庁が「景品表示法」や「ステルスマーケティング規制」により、過度な心理的誘導に対して規制を強化しています。消費者庁 これは、企業と消費者の間に公正な関係を築くための大切な指針です。

行動経済学は、消費者の心を動かす強力なツールですが、企業にとっては「人を動かす責任」をともなうものでもあります。だからこそ、心理学的アプローチと誠実な価値提供の両立が、これからのマーケティングの鍵となるのです。

次世代マーケティング戦略を無料プレゼント

この記事をお読みいただいた方へ、期間限定の特典をご用意しました。公式LINEにご登録いただくと、以下の豪華特典(すべて無料)を今すぐお受け取りいただけます。

  • 「人の心理とビジネスを10年以上研究しつづけた結果 成功するビジネスの作り方まとめ」(動画)
  • 「AIに勝てるニューロマーケティング本」(PDF)
  • 「私があなただけに教えるAIを使ってマーケティングする方法」(PDF)
  • 「黒字から始めるマーケティングのやり方」(PDF)

どれも、経営者やマーケターの皆様にとって明日から実践できるヒントが満載のコンテンツです。LINE登録はわずか30秒で完了しますので、ぜひ友だち登録して特典をお受け取りください!成功するビジネスへのヒントを詰め込んだ資料と動画を手に、新たなマーケティング施策に踏み出してみましょう。

継続的に顧客の心と脳を研究し、賢く脳科学を活用することで、きっとあなたのマーケティングも次のステージへと進むはずです。ぜひこの機会にニューロマーケティングの第一歩を踏み出してください。

執筆者
遠藤 貴則法廷臨床心理学博士 Takanori K. Endo

世界40ヵ国以上から累計23万人以上が受講する国際的スピーカー、トレーナー、元アルビズ大学准教授。

アメリカ、オレゴン州のルイス&クラーク大学で心理学で学士を取り、フロリダ州のアルビズ大学にて心理学の修士と臨床心理学、法廷特化の博士号を取得。2015年にオレゴン州の臨床心理学者としての国家治療免状を得る。過去にアメリカ心理学会、国際心理学会、アメリカ法廷心理学会など数多くの学会で研究を発表している。

日本帰国後は日々実践できる科学をテーマにニューロマーケティング(神経マーケティング)、教育学、経営学、統計学などを教え述べ23万人以上の講演会を開催。

プロフィール詳細はこちら

関連記事

行動経済学で読み解く「アンパンマン」の人気の秘密とは?

行動経済学で読み解く「アンパンマン」の人気の秘密とは?

「選ばれる商品」はどう作る?ニューロマーケティング×パッケージデザイン入門

「選ばれる商品」はどう作る?ニューロマーケティング×パッケージデザイン入門

TikTokとスタバはなぜハマる?4顧客の心を掴むつの心理類型(アーキタイプ)

TikTokとスタバはなぜハマる?4顧客の心を掴むつの心理類型(アーキタイプ)

戻る