ニューロマーケティングの事例6選|成功企業の戦略をやさしく解説

「なぜこの広告が気になるのか?」「つい手に取ってしまうパッケージには、どんな仕掛けがあるのか?」そんな問いに科学的に迫るのが、ニューロマーケティングという手法です。
ニューロマーケティングは、脳波や視線、表情など“無意識の反応”を数値化し、広告や商品開発に活かす新たなアプローチ。近年、国内外の企業が続々と導入を進めています。
本記事では、実際の導入企業6社の成功事例を通じて、ニューロマーケティングの可能性と活用ポイントをやさしく解説します。
ニューロマーケティングとは脳科学を活用したマーケティング手法
ニューロマーケティングは、脳波や視線、心拍数などの生体反応を測定し、消費者の無意識の反応を分析する手法です。これにより、広告や商品開発の精度向上を目指します。
従来のアンケートやインタビューでは得られない「本音データ」を取得できる点が特徴です。
1. 森永製菓|視線と脳反応から導かれた“選ばれる”パッケージ
視線と脳の反応は、消費者の“無意識の本音”を映す鏡。森永製菓は、自社商品のパッケージデザインの評価にニューロマーケティングを活用しています。
具体的には、アイトラッキング(視線追跡)とfNIRS(機能的近赤外分光法)を組み合わせて、どの要素が目に留まりやすく、脳を活性化させているかを分析。
この調査により、商品のどの部分が記憶に残りやすく、購入の後押しとなっているのかを科学的に把握できました。結果として、デザイン改良によって購入率が向上。パッケージ開発において、「感覚」ではなく「データ」に基づく意思決定が実現しました。
参照:【森永製菓株式会社との共同研究】アイトラッキング技術とfNIRSを用いたパッケージのデザインの評価
2. アース製薬|脳波と視線計測によるパッケージデザインの科学的評価
アース製薬は、商品のパッケージデザインの最適化にニューロマーケティングを活用しました。脳波や視線の動きを測定し、消費者の無意識の反応を分析。
その結果、視線が集中するデザイン要素や、脳活動が活性化するパッケージデザインの特徴を特定しました。2023年にパッケージをリニューアルした商品では、以前のデザインと比べて売上が2倍になった事例も報告されています。
参照:ヒットの理由を“脳”から探る。アース製薬、売り上げ2倍のパッケージ戦略
3. 吉野家|「朝定食」で脳が活性化?意外な差が明らかに
朝食に「ごはん派」か「パン派」か。そんな問いに、脳科学の視点から挑んだのが吉野家です。同社は、fNIRSを用いて、朝定食を食べた後の脳の前頭前野の活動を測定。結果、パンよりも和定食の方が、注意力や記憶力を司る脳のエリアが活性化する傾向が見られました。
この調査結果は、単なる学術的興味ではなく、商品プロモーションにも直結しています。「朝ごはんで脳を活性化」というメッセージは、実際の科学データに基づいた説得力ある訴求となり、販促施策に活用されました。
参照:吉野家の朝定食はパン食に比べ脳活動を活性化する~20 代から 50 代の男性 50 人対象 朝食摂取比較試験報告~
4. radiko|“耳だけ”でも脳は反応している
インターネットラジオサービス「radiko」は、音声広告の効果を脳科学的に検証しました。株式会社NeUとの共同実験により、音声広告と映像広告を比較し、脳活動を測定。
その結果、音声広告視聴中に「自分ごと化」に関連する脳領域の活動が高まり、記憶の維持率が高いことが確認されました。この結果を受けて、radikoは音声広告のクリエイティブを改善し、広告効果の向上を図りました。
参照:音声広告は映像広告と比べて記憶の維持率が高い!radiko、その理由を脳科学的実証実験で解明
5.ペプシコーラ|fMRIでロゴが脳に与える影響を検証
ペプシ・コーラは、ブランド評価にfMRIを用いた脳科学的手法を導入しました。被験者にブランド名を伏せた状態と明示した状態でコーラを飲んでもらい、脳活動を比較。
その結果、ブランド名を明示した状態でのみ、コカ・コーラのロゴ提示時に脳の前頭葉が活発に反応することが確認されました。この実験結果は、ブランドが消費者の脳活動に影響を与えることを示しており、ブランド戦略や広告表現の見直しに活用されました。
6.アサヒビール|缶チューハイ『アサヒもぎたて』のパッケージデザイン
アサヒビールは、缶チューハイ『もぎたて』のパッケージデザインの最適化にニューロマーケティングを活用しました。マクロミルとの共同研究により、アイトラッキング技術を用いて消費者の視線の動きを測定。
その結果、視線が集中するデザイン要素や、購買意欲を高めるパッケージデザインの特徴を特定しました。これらのデータをもとにパッケージデザインを改善し、売上の向上に成功しました。
参照:マクロミルのニューロリサーチ(脳波測定×アイトラッキング)が、アサヒビールの『アサヒもぎたて』新パッケージ開発に採用!
ニューロマーケティングを自社に取り入れる方法
「うちでもニューロマーケティングをやってみたいけれど、何から始めればいい?」という企業担当者は多いでしょう。実際には、専門機材や脳科学の知識がなくても、段階的に導入を進めることが可能です。
まずは「何を明らかにしたいのか」を決めましょう。たとえば、「新しい広告が視聴者に刺さっているか知りたい」「どのパッケージが最も注目されるか比較したい」など、目的がはっきりしていれば、それに適した手法を選びやすくなります。
次に、外部のリサーチ会社や専門機関に相談するのが現実的です。最近では、EEG(脳波計測)やアイトラッキングの簡易パッケージを提供する企業も増えており、初期投資を抑えつつ試験的に始めることも可能です。
まずは小規模な実証実験からスタートし、効果を見極めながら徐々にスケールを広げていくのがおすすめです。無理に全社展開するのではなく、目的・予算・倫理面を丁寧に考えながら、段階的に活用範囲を広げていく姿勢が成功のポイントです。
ニューロマーケティングに関する研究論文・学術的根拠
「脳の反応って、本当にマーケティングに役立つの?」と思った方もいるかもしれません。実は、この手法にはきちんとした学術的な裏付けがあります。
たとえば、「価格が高いワインほど“おいしい”と感じてしまう脳の仕組み」がfMRIで明らかにされました。これは、私たちが値段という情報によって脳の“報酬系”が影響を受け、実際に味の感じ方まで変わってしまうというものです。つまり、「思い込み」が本当に脳内で起きていることが、科学的に証明されたのです。
また、行動経済学の第一人者ダン・アリエリー(Dan Ariely)も、脳の働きを活用したマーケティングの有効性について多数の実験を発表しています。彼の研究では、「消費者の選択は論理よりも感情によって動かされる」といった傾向が、神経科学的に裏づけられています。
これらの研究はすべて、ニューロマーケティングが単なる“トレンド”ではなく、しっかりとした科学に基づく実践であることを示しています。
ニューロマーケティングの導入ポイントと注意点
ニューロマーケティングを導入するには、事前に「なぜやるのか」「どのように活用するか」といった目的を明確にすることが最も重要です。たとえば「CMの改善点を見つけたい」「パッケージデザインを検証したい」など、狙いをはっきりさせることで、選ぶべき技術や調査方法も自然と見えてきます。
また、費用対効果も大きな検討材料です。脳波測定やfMRIなどの技術は高額になることもあるため、目的と予算のバランスを取りながら、無理のない範囲で調査規模を調整しましょう。
近年では、安価に実施できる簡易的な脳波計やオンラインによる視線調査なども登場しており、選択肢は広がっています。
そして忘れてはならないのが「倫理的な配慮」です。脳や身体の反応を扱うという性質上、調査対象者の同意をきちんと得ることや、プライバシーを守る体制を整えることが必須です。もし企業がこの点を軽視してしまうと、ブランドへの信頼を損なうリスクさえあるでしょう。
まとめ:ニューロマーケティングで消費者の本音に迫る
ニューロマーケティングは、私たちの「なんとなく気になる」「つい手に取ってしまう」といった無意識の反応を可視化することで、従来のマーケティング手法では得られなかった「本音のデータ」を提供してくれます。商品開発や広告改善において、その“感覚”を数字として捉えられることは、企業にとって非常に価値のある武器になります。
今回紹介した事例のように多くの企業がニューロマーケティングを導入し、表現の改善やブランド戦略の強化につなげています。これらの事例からも、その効果と可能性は明らかでしょう。
今後は、AIやビッグデータといった先端技術との連携が進むことで、リアルタイムに感情を解析し、その場で広告や商品を最適化するといった未来も現実のものとなるはずです。
人の「心の動き」に寄り添いながら、より自然に、より効果的にアプローチできる。それがニューロマーケティングの最大の魅力です。今後の展開にも目が離せません。
次世代マーケティング戦略を無料プレゼント
この記事をお読みいただいた方へ、期間限定の特典をご用意しました。公式LINEにご登録いただくと、以下の豪華特典(すべて無料)を今すぐお受け取りいただけます。
- 「人の心理とビジネスを10年以上研究しつづけた結果 成功するビジネスの作り方まとめ」(動画)
- 「AIに勝てるニューロマーケティング本」(PDF)
- 「私があなただけに教えるAIを使ってマーケティングする方法」(PDF)
- 「黒字から始めるマーケティングのやり方」(PDF)
どれも、経営者やマーケターの皆様にとって明日から実践できるヒントが満載のコンテンツです。LINE登録はわずか30秒で完了しますので、ぜひ友だち登録して特典をお受け取りください!成功するビジネスへのヒントを詰め込んだ資料と動画を手に、新たなマーケティング施策に踏み出してみましょう。
継続的に顧客の心と脳を研究し、賢く脳科学を活用することで、きっとあなたのマーケティングも次のステージへと進むはずです。ぜひこの機会にニューロマーケティングの第一歩を踏み出してください。


法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。
1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス&クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業(博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される(2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center)。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒 脳が断れない「無敵のセールスシステム」』(きずな出版)、共著に『仕事の教科書』(徳間書店)がある。