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売上を左右する脳の仕組み:中小企業向けニューロマーケティング手法5選

売上を左右する脳の仕組み:中小企業向けニューロマーケティング手法5選

「ニューロマーケティング」という言葉をご存知でしょうか?1900年代アメリカ発祥のそのマーケティング手法は、脳神経科学を活用した販売戦略です。

日本での認知度は低いものの、顧客の脳を分析する斬新なアプローチはあなたの会社の売上を劇的に向上させる可能性を秘めています。

本記事では、中小企業でもすぐできる実践的なニューロマーケティング手法を5つご紹介します。消費者の脳の仕組みを理解し、ぜひ自社の発展に活かしてください。

ニューロマーケティングとは

ニューロマーケティングは、ニューロサイエンス(脳神経科学)とマーケティングの融合です。脳の活動を正確に測定できるようになった今、脳科学のビジネス活用はさらに加速しています。

従来のマーケティングは、消費者が理性的に買い物することが原則です。対して、ニューロマーケティングは購買行動はそもそも本能的・感情的であるとしています。その前提で、特徴を順に見ていきましょう。

ニューロマーケティングの目的  

ニューロマーケティングの目的は、刺激に対する脳の反応を科学的に把握することです。そして、企業活動が顧客に与える影響を分析します。

購買行動は、約95%が無意識だそうです。嗜好や過去の経験は、パターンとして迅速に脳で処理されるからでしょう。ニューロマーケティングはまさに、消費者の「無意識」を明らかにする取り組みかもしれません。

ニューロマーケティングの分析手法

脳の反応は複雑なため、専門機器・技術を用い複数のアプローチでの検証が必要です。以下に、ニューロマーケティングの代表的な分析手法を紹介します。

・「脳波測定(EEG)」:頭皮に電極を装着し脳神経活動を記録

・「電気性皮膚反射(GSR)」: 皮膚の発汗による電気伝導率の変化を観察

・「眼球追跡(Eye Tracking)」:特殊カメラや赤外線センサーで眼球の動きを調査

・「機能的磁気共鳴画像法(fMRI)」:磁気を利用して脳内の血流の変化を可視化

アメリカでは、ニューロサイエンスに多額の研究資金が投入されています。そして、ニューロマーケティングも多くの実験データが蓄積され一定の成果を上げているのが実情です。

ニューロマーケティングのメリット・デメリット

マーケティングは、「商品が売れる仕組みづくり」です。ニューロマーケティングの最大のメリットは、科学的根拠のある売上向上策の発案といえるでしょう。ただし、何事もメリットだけではないので以下ご注意ください。

ニューロマーケティングのメリット・デメリット

メリットデメリット
・消費者の無意識な反応を把握・広告や商品デザインの最適化・顧客の購買行動を戦略的に促進・検証機器のコストが高い・分析結果に専門知識が必要・倫理的な見極めが難しい

ニューロマーケティングは、アンケートなどでは得られない本音を把握できる強力な手法です。しかし、革新的であるがゆえに専門知識や良識が求められます。

ニューロマーケティングを中小企業で活用する方法5選

大企業では、専門の脳波計測器を使った大がかりな調査が行われています。とはいえ、海外の学術研究や実験データが公開されています。以下に紹介する手法はそれらを活用したものです。

  • 店内レイアウト:視覚の重要性を見直す
  • 価格設定:先入観は利用できる
  • キャッチコピー:感情を喚起させる
  • 商品パッケージ:認知は心理に影響する
  • 自社ウェブサイト:できるだけストレスを排除する

では、中小企業もすぐ実践できるニューロマーケティングのアイデアを詳しく見ていきましょう。

店内レイアウト:視覚の重要性を見直す

消費者は、視覚から得る情報(特に色彩)に大きく感情を動かされます。初見90秒の商品評価は、62〜90%が色に基づくそうです。 店内のレイアウトを見直す際は、以下の視覚的要素を取り入れてください。

・入口の視覚的インパクト:「目を引く商品やポスター」→入りたくなる雰囲気をつくる

・視線の流れを意識した動線:「ジグザグ動線」→回遊させて滞在時間を延ばす

・商品の見せ方を工夫:「アイレベルを意識」→売りたい商品を目線の高さに合わせる

・余白を活かす:「詰め込みすぎない陳列」→視覚的に選びやすい印象を持たせる

・鏡やガラスを活用:「反射を使った視覚効果」→空間を広く見せる

中小企業の小売店は、予算やスペースの制約があります。それゆえ、視覚的なアイデアは必要不可欠でしょう。

価格設定:先入観は利用できる

価格設定は購入意欲に大きく作用します。顧客は価格を「品質の指標」としているからです。この「価格バイアス」ともよばれる先入観は、以下のように利用できます。

・基準価格の設定:「通常価格10,000円を今だけ5,000円!」→半額のインパクトを活用する

・端数価格(99や98):「4,980円」→心理的抵抗が少ない

・比較商品を設置: 「Sサイズ500円、M800円、 L850円 」→ Lサイズがお得に感じる

・高価格商品を隣接:「10万円、5万円、3000円」標準商品がお手頃に見える

・無料提案:「1本買うともう1本無料」→コストゼロの魅力をアピールする

消費者は「希少性」や「限定性」に敏感です。心理を理解したうえで価格の見せ方を工夫すれば、売上は向上します。

キャッチコピー:感情を喚起させる

情景を想起させるキャッチコピーは、人の心に響きます。商品POPやメッセージカードなどを活用して顧客の感情にアプローチしてみましょう。

・共感:「たった5分でリラックスつづく」→顧客の気持ちを代弁する

・驚き:「あなたの選択は間違っていた?」→意外性で注意を引く

・具体性:「わずか3日で実感!世界が変わる」→イメージしやすい数字を使う

・希望:「これさえあれば毎朝楽しい」→ポジティブな理想の状態を想像させる

・ストーリー性:「昔の私と同じ悩みを持つあなたへ」→ビフォーアフターや体験談を伝える

調査でも、事実ベースの広告は69%に対し感情的なものは81%でブランド名を記憶していました。感情に訴えるメッセージほど人々の心に刻まれます。

商品パッケージ:認知は心理に影響する

商品認知のプロセスには、安全性を判断するなど本能的な要素も含まれています。つまり、商品パッケージの工夫は、購買意欲を引き出す強力なきっかけといえるでしょう。

・デザイン:「色、フォント、ロゴ、イラスト、写真」→視覚的要素を最大限活用する

・素材:「商品の性質に合った素材」→質感で商品の価値を引き立てる

・機能性:「保存性、使いやすさ、開封しやすさ」→利便性が購入の決定を後押しする

・情報:「説明のわかりやすさ、環境への配慮」→簡潔な表現が好感を持たれやすい

・差別化:「ユニークさ、独自性、ユーモア」→他にない価値を提供しファン化を促進する

製品そのものは変わらなくても、パッケージを変えれば売れる事例はたくさんあります。低予算で訴求力を強化するにはもってこいの手法です。

自社ウェブサイト:できるだけストレスを排除する

中小企業がニューロマーケティングを活用する方法のひとつとして、自社ウェブサイトで顧客のストレスを排除するという取り組みがあります。

・読み込み速度の最適化:「画像を圧縮し不要なスクリプトを削減」→待ち時間の軽減

・シンプルなデザイン:「装飾や広告を最低限にし簡素化」→利便性向上

・モバイル対応の最適化:「レスポンシブデザインを採用」→スマホやタブレットでも見やすい

・お客様の声を紹介:「レヴュー、体験談、FAQ設置」→安心感向上

・スムーズな購入フロー:「入力フォームの簡素化やタップしやすいボタン設定」→かんたんでわかりやすい

簡易的ななデジタル施策は、中小企業でもすぐできます。お金をかけずに、購買意欲やエンゲージメントを高めることが可能です。

ニューロマーケティングの成功事例を行動経済学的に解説

「行動経済学」は、心理学と経済学の融合です。「消費者は必ずしも合理的行動をとらない」という基本理念は、ニューロマーケティングと合致します。合理性や論理性にとらわれない成功事例を、以下に紹介します。

  • 米国スキー場Greek Peakの復活劇 :アンカリング効果
  • 米国カフェチェーンのポイントカード実験:ゴール勾配効果
  • イタリア発祥の出版社デアゴスティーニの戦略:サンクコスト効果
  • フランスのナンパの実験:プライミング効果
  • イギリス政府が実施した税金滞納防止対策:ナッジ理論

各事例を、行動経済学の観点から解説してみましょう。

米国スキー場Greek Peakの復活劇 :アンカリング効果

「アンカリング効果」とは、最初の情報(アンカー)が、その後の判断に強く作用することです。小規模スキー場「Greek Peak」の財政難を相談されたノーベル賞経済学者リチャード・セイラーは、アンカリングで業績を回復させます。

Greek Peakは小規模ながらもアクセスしやすいため、地元の人々が何度も利用するニーズを見越して、通常価格より40%安い週末リフト券5枚と平日リフト5枚が含まれる「10in1パス」を考案しました。

そのパスは、シーズン前の10月15日までに購入できます。いわゆる割引回数券を前売りすることで、実質的な一客単価の値上げを実現したのです。その手法は、長期的な顧客の囲い込みにも成功しています。

米国カフェチェーンのポイントカード実験:ゴール勾配効果

「ゴール勾配効果」とは、目標が目前であることで行動が加速する心理現象です。ある米国カフェチェーンは「12回利用で1杯無料」のカードを作成し、一部の顧客に「2回分のスタンプ済み」のカードを実験的に配布しました。

すると、スタンプ済みのカードを持つ顧客の再来が通常より多く確認されます。最初から進捗を感じさせる工夫をすることで、顧客の継続利用を促進できるという事例です。

イタリア発祥の出版社デアゴスティーニの戦略:サンクコスト効果

「サンクコスト効果」とは、すでに投資した労力を無駄にしたくない心理です。イタリア発祥の出版社デアゴスティーニは、サンクコスト効果を活用して継続購入を促進しています。

最初の数冊を手頃な価格で提供すると、コレクションが進むほど「途中でやめるのがもったいない」と感じます。一度始めると、途中でやめにくい経験は誰しもあるでしょう。

フランスのナンパの実験:プライミング効果

「プライミング効果」とは、ある情報や刺激が無意識的に影響を与える現象です。フランスのブルターニュ大学は、女性600人に声をかけるナンパの実験を行っています。

「靴屋さん」の前でのナンパ成功率は11.5%、「花屋さん」の前では24.0%と2倍以上も結果に差が出ました。人は、自分が思っている以上に周囲の情報に影響されるようです。

イギリス政府が実施した税金滞納防止対策:ナッジ理論

「ナッジ理論」とは、人々の行動を優しく促す方法です。イギリス政府はナッジ理論を用いて税金の支払い率を向上させました。

政府は「90%以上の国民が期限内に税金を支払っています」と通知に記載し、無理なく滞納者の支払い意欲を高めることに成功した好例です。

ニューロマーケティングを成功させる条件

行動経済学との掛け合わせでさらに有用なニューロマーケティングですが、成功に導くにはいくつかポイントがあります。順に説明していきます。

合理性を疑う

顧客は合理的に商品を選んでいるようで、実は「みんなが使っているから」「なんか落ち着く」「ステータス」「所有する喜び」など、心理的な満足感から商品を選ぶ傾向にあります。

「誰もが安くて良いものを欲しがっている」という固定概念は施策のアイデアを制限してしまいます。むしろ、感情や気分といった「非合理的要素」も強く意識した方が良いでしょう。

倫理性に配慮する

ニューロマーケティングを活用する際は、倫理的な配慮が不可欠です。「無意識を読み取る力」は、人の自由意思を操作する可能性があるからです。

「脆弱な消費者をターゲットにしない」「透明性を確保する」「個人情報を慎重に取り扱う」などに十分に配慮し、悪用とみなされないようにしましょう。

商品ではなく「ストーリー」を買ってもらう

今や、どの商品も一定以上の品質や機能を持っている時代です。人々は、「何を買うか」ではなく「なぜそれを買うか」に価値を見出すようになっています。

開発秘話や失敗談など、その背後にある「ストーリー」を知ることに商品以上の価値を感じているのでしょう。ニューロマーケティングにはその視点が非常に重要です。

まとめ:脳の仕組みを味方に、小さな工夫で大きな効果を

ニューロマーケティングは、消費者の無意識的な脳反応を分析する手法です。中小企業でも活用できる実践的なアプローチには、店内レイアウト、価格設定、キャッチコピー、商品パッケージ、ウェブサイトの改善があります。

行動経済学の多くの理論は、人の行動や意思決定を引き起こす要因「心理トリガー」を活用しています。それら活用すれば、大きなコストをかけずに効果を高めることができます。 

幸い、先人たちの研究のおかげで、私たちは効果の上がりやすい方法をあらかじめ知ることができます。ニューロマーケティングという名の地図を上手に活用し、ぜひ明日からのビジネスに役立ててください。

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執筆者
遠藤 貴則法廷臨床心理学博士 Takanori K. Endo

世界40ヵ国以上から累計23万人以上が受講する国際的スピーカー、トレーナー、元アルビズ大学准教授。

アメリカ、オレゴン州のルイス&クラーク大学で心理学で学士を取り、フロリダ州のアルビズ大学にて心理学の修士と臨床心理学、法廷特化の博士号を取得。2015年にオレゴン州の臨床心理学者としての国家治療免状を得る。過去にアメリカ心理学会、国際心理学会、アメリカ法廷心理学会など数多くの学会で研究を発表している。

日本帰国後は日々実践できる科学をテーマにニューロマーケティング(神経マーケティング)、教育学、経営学、統計学などを教え述べ23万人以上の講演会を開催。

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