YouTubeで薄い知識がバズる理由とは?認知心理学・行動心理学で徹底解説

「なぜYouTubeで、ちょっと薄っぺらいな…と感じる知識や情報が、驚くほどたくさんの人に見られて、ものすごくバズったりするんだろう?」
そんな風に、不思議に思ったことはありませんか?
ビジネスで本当に役立つ、深く実践的な知識こそ、もっと多くの人に届いてほしいのに、なぜか表面的な情報ばかりが注目を集めているように感じる。これは、SNSが私たちの日常に深く根ざした現代において、多くの人が抱いている疑問かもしれません。
本記事では、この疑問を、私が専門とする認知心理学や行動心理学といった、ちょっと科学的な視点からじっくりと解説してみようと思います。YouTubeをはじめとする様々なメディアで情報がどうやって広がっていくのか、そして、なぜ「薄い知識」がこれほどまでにバズりやすいのか、そのメカニズムを一緒に探っていきましょう。
バズるためには「知識の薄さ」が重要?
「え、でも、本当に使える深い知識の方が、みんな知りたいんじゃないの?」
そう感じますよね。確かに、ビジネスでしっかり成果を出していくためには、深い知識や積み重ねたスキルが必要不可欠です。でも、YouTubeやSNSといった、本当に多くの人が日常的に利用するプラットフォームで「バズる」という現象を紐解いていくと、もしかしたら「知識の薄さ」がカギになるのかもしれない、と私は考えているんです。
これは一体、どうしてなのでしょうか? ちょっとイメージしやすいように、「物の質量」に例えて考えてみましょう。
例えば、重たい荷物(質量が大きい物)って、少しの距離を運ぶだけでも大変な労力がかかりますし、遠くまでたくさん運ぶのはもっと難しいですよね。一方、ティッシュペーパーみたいに軽い物(質量が小さい物)なら、片手で楽に持ち運べますし、遠くまで簡単に送ったり、たくさんの人に配ったりすることもあっという間です。
情報というものも、これと似たような性質を持っているように感じます。深く、複雑な情報ほど「質量」が大きいと言えるかもしれません。受け取る側がそれを理解し、自分のものとして処理するためには、それなりの「労力」が必要になるからです。逆に、浅くシンプルな情報なら、「質量」が小さく、受け取る側も身構えることなく、簡単に多くの人に伝わっていきます。
考えてみれば、YouTubeやSNSって、多くの人が日常のちょっとした時間に、気軽に楽しむために開く場所ですよね。重たい荷物(深い知識)を、わざわざ頑張って運ぼうなんて、よほど目的意識がない限り、なかなか思わないものなのかもしれません。
人間の脳の特性:認知負荷理論とシステム1・システム2
では、そもそも人間って、なぜ深い情報や複雑な内容を処理するのを、ちょっと避けがちなのでしょうか? これには、私たちの脳の基本的な仕組みが関係しているんです。
心理学には、「認知負荷理論」という考え方があって、これはですね、人間の脳が一度に処理できる情報量には限りがある、ということを言っているんです。あまりにも複雑すぎたり、情報量が多すぎたりする内容は、脳にとって「処理負荷」が高くなってしまい、理解するのが難しくなってしまうんですね。
それに加えて、ノーベル経済学賞を受賞されたダニエル・カーネマンさんは、人間の思考を二つのシステムで説明してくださいました。「システム1」は、直感的で素早く、どちらかというと感情的な思考。そして、「システム2」は、論理的でじっくり時間をかけて、努力が必要な思考です。
YouTubeのようなメディアで、私たちが何か情報を消費しようとする時、多くの場合、システム1が優位になっているように感じます。つまり、ぱっと見て、直感的に素早く理解できる情報を好むんですね。ビジネス戦略の深い話とか、複雑なデータ分析といった、システム2をしっかり使わないといけない内容は、脳にとって処理に時間がかかりますし、結構な労力がかかります。だから、視聴している途中で「うわ、難しいな…」と感じてしまい、動画を飛ばしてしまったり(スキップや離脱が増えたり)することが多くなるようです。
逆に、ざっくりとしていて分かりやすい情報、あるいはキャッチーな「薄い知識」は、システム1でも簡単に処理できます。これにより、見ている側は「ああ、何となく分かったぞ」という気になれたり、まるで「知識が一つ増えた!」というような錯覚を得やすくなったりするんですね。そして、そこに面白さやエンタメ的な要素が加わると、さらに気軽に消費される。これは、脳の省エネモードが働いている結果、と言えるかもしれません。
バズりを後押しするその他の心理効果
知識の薄さが、こんなにもバズりやすい背景には、他にもいくつか、人間の心理が巧妙に影響しているように見えます。
- ダニング・クルーガー効果: これは、知識やスキルがまだ十分ではない人ほど、自分の能力を実際よりも高く評価してしまいやすい、というちょっと面白い認知バイアスです。知識が浅い人ほど、表面的な情報に触れただけで「もう理解した!」と錯覚しやすくなる傾向があるようです。深い知識の本当の難しさに気づかないからこそ、浅い知識で満足してしまう、という側面もあるのかもしれません。
- ソーシャルプルーフ(社会的証明)とバイラル性: 人間って、「他のたくさんの人が良いって言ってるなら、きっと良いものだろう」「多くの人が見てるなら、私も見てみよう」と、他人の行動を信じたり、それに追随したりしやすい生き物です。これをソーシャルプルーフ(社会的証明)と言います。みんなが共感しやすい、あるいは「これ面白い!」と感じる難しくない話は、SNSなどで「いいね!」されたり、シェアされやすかったりしますよね。そうやって、さらに多くの人に広まっていく。これがバイラル性ですね。
- 短期的な報酬(ドーパミン): 私たちは、頑張ったことに対して、すぐに目に見える結果や満足感が得られることを好む傾向があります。脳内で分泌されるドーパミンという物質は、こうした短期的な達成感や快楽に関わっていると言われます。「たった3日で人生が変わる!」「これをやるだけで即効性!」といった、まるで魔法のようにすぐに結果が得られる(あるいは、そう思わせる)話は、このドーパミンを刺激し、私たちの興味を強く引きつけます。一方で、ビジネスで本当に成果を出すための深い知識の学習は、結果が出るまでに時間がかかることが多く、短期的な報酬が得られにくいため、ついつい後回しにされがちなのかもしれません。
深い知識はなぜ見られないのか?
では、ビジネスで本当に役立つ、深い知識や実践的なスキルに関する情報は、なぜ多くの人の目に触れにくいのでしょうか?
それは、これらの情報が、じっくり考えるシステム2での処理を必要とし、そもそもそれを求めているターゲット層が限られているから、と言えるでしょうね。例えば、会社の買収・売却に関する具体的な成功事例とか、財務諸表を細かく分析して投資判断をする方法といった内容は、それを真に必要としている層(たとえば経営者や経験豊富な投資家など)にとっては、喉から手が出るほど価値のある情報だと思います。ですが、多くの一般の人にとっては、難解に感じられますし、「自分には関係ないかな」と思ってしまう。
「お金持ちになるための、誰でもできる簡単な3つのルール」という動画は、多くの人が興味を持って見るかもしれません。でも、「事業売却時のキャッシュフロー計算方法を徹底解説」という動画は、本当にその必要に迫られている人や、その分野を深く学びたいと思っている人しか見ないはずです。これは、情報が「重たい」性質を持っていて、さらにそれを必要とする「ターゲット層が狭い」ため、広くバイラルしにくい、という性質があるからでしょうね。
薄い知識をビジネスに活用するには?
では、この「薄い知識がバズりやすい」という特性を、私たちのビジネスにどう活かしていけば良いのでしょうか?
コンテンツマーケティングの世界では、この性質をよく理解し、戦略的に活用することがとても重要になります。例えば、本当に伝えたい深い知識やノウハウがある場合でも、いきなりそれをドーンと出すのではなく、まずは「薄い知識」を「入口」として使う、という考え方です。
具体的には、
- エンタメ要素を加えてみる: 一見難解な内容も、面白さやエンタメ性を加えることで、ぐっと親しみやすくなることがあります。
- ストーリー仕立てにしてみる: 自分の経験や、お客様の実績などをストーリーとして語ることで、聞き手は共感しやすくなります。たとえその体験談が、他の人が同じことをやっても再現できるような(中身を分析した)ものでなくても、「へぇ、そんなことってあるんだ!」と多くの人が興味を持って聞いてくれるものです。
- 短期的なメリットを提示してみる: 「これをやれば1週間で〇〇できる!」「〇〇するだけですぐに効果が!」といった、聞けばすぐに何か良いことが得られる(ように見える)話を提示することで、多くの人の関心を引くことができます。
これは、物理学で火を燃やすことに例えると分かりやすいかもしれません。いきなり太くて湿った大きな薪(とても重くて難しいコンテンツ)に火をつけようとしても、なかなか燃え上がらないですよね。でも、まずティッシュペーパー(軽くて薄い、燃えやすいコンテンツ)のようなもので火種を作り、そこに乾燥した藁(少し重い)、小枝(もう少し重い)…と、徐々に燃えやすいものを加えていき、火を大きく育てて、最後に大きな薪に火を移す、というイメージです。
つまり、まずは多くの人が身構えずに気軽に触れられる「薄い知識」という「火種」で興味を引きつけ、そこに集まってくれた人たちを、より深い知識という「大きな薪」へと誘導していく「ファネル」を構築することが、今の時代のマーケティングでは非常に重要になってくる、と言えるでしょうね。例えば、無料の小冊子や動画(リードマグネット)でメールアドレスを登録してもらい、メールマガジンで段階的に深い情報を伝えていく、というのも、このファネル戦略の一つと言えます。
生産者と消費者のミスマッチ、そして私のチャンネル
現代の市場では、情報を「作る側(生産者)」と「受け取る側(消費者)」の間で、知識に対するニーズにちょっとしたミスマッチが起きているように感じています。
- 消費者側は: ライトで手軽に消費できる、浅い知識ばかりを求める傾向。
- 生産側は: 専門的で、どうしても「重たい」しっかりした知識を作りたがる傾向。
情報を生み出す側は、自分が自信を持って作り上げた「重たい」知識やノウハウを、多くの人に「これが本当に価値のあるものなんだ!」と届けたいと考えます。でも、情報を受け取る側は、残念ながらそれを求めていない、という状況が起きているようです。結果として、せっかく質の高い情報を作っても、多くの人には見向きもされない、という悲しい現実が生まれてしまう。
私が運営している「世界一ゆるいビジネスサイエンスチャンネル」というVoicyのチャンネルは、「ビジネスの科学」という、世間一般から見ると、おそらく「重たい」テーマを扱っています。ですが、あえて「世界一ゆるい」という言葉を使っているのは、ビジネスの科学を専門的に研究したり実践したりしている人たちの基準から見たら、このチャンネルで話している内容は「ゆるい」(つまり、分かりやすい、あるいは表面的な)と言えるかもしれない、という意味を込めているからなんです。
この「ゆるさ」が、先ほど話した「一流のビジネスパーソンが、忙しい日常の中で、表面的なトレンドやエッセンスとしてサッと取り入れる『ゆるい』知識」と、もしかしたら重なる部分があるのかもしれませんね。
私のVoicyチャンネルでは、もしかしたらすぐには理解できないかもしれない「重たい」テーマも、もちろん扱っていきます。でも、面白いもので、聞き続けていると、まるで新しい言語を学ぶみたいに、「ビジネスサイエンス語」にだんだん慣れてくるものなんです。最初はちょっと難しく感じるかもしれませんが、継続して耳を傾けていただくことで、きっと理解が深まっていくはずです。
ちょっと裏話的な視点からお話しすると…
インターネット上には、本当にたくさんの情報が溢れていますが、その全てを鵜呑みにするのは、ちょっと危険かもしれませんね。例えば、書籍のレビューなんかを読むとき、極端な高評価(星5)ばかりを見るのではなく、あえて「星1」や「星3」のレビューにも、少し目を向けてみることをお勧めします。
星1のレビューは、単なる感情的な批判だったり、的外れな意見だったりすることも多いのですが、その中に時々、その書籍の「本質的な問題点」を鋭く突いているものがあったりするんです。そして、意外と「事実」や「現実」に近い視点が含まれていることが多いのは、「星3」あたりの評価だったりする傾向があるように感じています。完璧ではないけれど、ある程度の実践性や現実的な視点がバランス良く含まれている、ということなのかもしれませんね。ぜひ、色々な視点から情報を見る目を養ってみていただけたらと思います。
まとめ
YouTubeなどのプラットフォームで、なぜ情報がバズるのか。この現象は、単なる偶然や運だけではなく、私たちの心の仕組みや、情報が伝わる基本的な特性に基づいている、と言えるでしょうね。
- 薄い知識がバズりやすいのは: 脳にとって処理が楽で、システム1でパッと理解しやすいから。だから、みんなが気軽に消費できるんですね。さらに、ダニング・クルーガー効果による「分かったつもり」という錯覚や、ソーシャルプルーフによる広がりやすさ、そしてドーパミンによる短期的な満足感が、このバズりを後押ししているように見えます。
- 深い知識がバズりにくいのは: 脳が一生懸命考えなければならないシステム2が必要で、処理負荷が高いため、ついつい敬遠されがちだからでしょう。それに、本当にその知識を必要としているターゲット層が限られているため、広く一般にバイラルしていくのが難しい、という性質もあるようです。
- ビジネスに活かすなら: コンテンツマーケティングでは、いきなり「重たい」深い知識を出すのではなく、まずはエンタメ要素やストーリー、そしてすぐに得られるようなメリットを匂わせる「薄い知識」を入口として使い、そこから興味を持った人たちを、より深い内容へと丁寧に誘導していく「ファネル戦略」が有効かもしれません。
情報を「作る側」と「受け取る側」の間には、求める知識のタイプにミスマッチがあるようです。多くの消費者は、手軽でサッと理解できる「浅い知識」を求めがちなんです。
もしあなたが「受け取る側」の消費者ではなく、「作る側」の経営者であるならば、ぜひ一緒にビジネスサイエンスの世界を、ゆるく深く探求していきましょう。
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法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。
1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス&クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業(博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される(2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center)。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒 脳が断れない「無敵のセールスシステム」』(きずな出版)、共著に『仕事の教科書』(徳間書店)がある。