相手に刺さる伝え方と会話術～共感で心を掴む技術

ニューロマーケティング

2025.10.11

「頑張って話しているのに、なぜか相手に届かない」
「一生懸命説明しているのに、途中で話を切られてしまう」

そんな経験は、多くの人が一度は味わったことがあるのではないでしょうか。

会話やプレゼンは、単なる情報のやり取りではなく、相手の感情を動かし、行動へとつなげる大切な機会です。
ところが現実には「正しいことを伝えているはずなのに響かない」という壁にぶつかる人が少なくありません。

その理由はシンプルです。問題は内容ではなく、伝え方そのものにあるのです。

本記事では、心理学や脳科学の視点を交えながら「相手に刺さる伝え方と会話の技術」を解説します。
聞き方と話し方の工夫、主語や視点の切り替え、スルーされない表現の工夫、そして共感を呼ぶ言葉選び。
これらを押さえることで、会話の質は驚くほど変わっていきます。

相手に刺さる伝え方の本質とは

正しいよりも伝わるが大切

多くの人は「正しいことを言えば相手に伝わる」と考えがちです。

しかし実際には、正論がそのまま相手の心を動かすとは限りません。
ビジネスの現場でも、部下に正論をぶつけても動かない、顧客にメリットを説明しても契約につながらない、そんな場面を経験することは多いはずです。

脳科学の研究によれば、人はまず「感情」で反応し、その後に「理屈」で納得します。
伝わらない原因は「感情を動かせていない」ことにあるのです。

伝え方と聞き方の技術を両立させる

会話を成果につなげるには、話す力と聴く力をセットで磨く必要があります。

相手の言葉を最後まで聞き、短く要約して返す。
これだけで「理解されている」と感じた相手の心は自然に開きます。
心が開いたとき、こちらの言葉は深く刺さりやすくなるのです。

主語と視点の違いが会話を左右する

「私はこう思う」よりも「あなたはこう感じますか」という言い方の方が、相手は受け取りやすくなります。

主語を自分から相手に移すだけで、会話は共感を伴うものに変化します。
対話の質を大きく高めるポイントです。

スルーされない話し方の実践術

なぜスルーされるのか

現代は情報があふれています。
人は「必要がない」と判断した情報を、瞬時にスルーしてしまうのです。

特に会議や商談の場では、説明が長く複雑になるほど聞き流されやすくなります。

だからこそ必要なのは

短く
明確に
相手の関心に直結した言葉

たとえば「この方法を使えば作業効率が20％改善します」と具体的な数字を示すと、相手の注意を引きやすくなります。

心を掴むコミュニケーションの工夫

人は「自分のことを考えてくれている」と感じたときに強い共感を覚えます。

営業であれば「この商品は安いです」よりも「この商品はあなたの時間を30％節約します」と伝える方が響きます。
相手の背景に寄り添った言葉選びが、会話術の中核となるのです。

共感を呼ぶ言葉選び

「頑張りましょう」より「一緒に取り組んでいきましょう」
「できません」より「別の方法を検討してみませんか」

ほんの少しの言い換えで、言葉は共感を生みます。
共感は相手の心を柔らかくし、行動を後押しする力となります。

会話を成果につなげる仕組み

認知バイアスを活用する

心理学には、人の行動を左右する認知バイアスがあります。
会話に自然に取り入れることで、相手の心を動かしやすくなります。

返報性－「いつも助けてもらっているので」→相手はお返しをしたくなる
希少性－「今だけの機会です」→相手は行動を急ぐ
社会的証明－「多くの人が利用しています」→相手は安心して選択できる

ビジネスでの具体例

営業－顧客の不安を言語化し「だからこそこの解決策が役立ちます」と伝える
マネジメント－部下の成果を認め「あなたの強みがチームを支えています」と言う
交渉―条件を押しつけず「お互いに納得できる着地点を探りましょう」と提案する

ケースストーリー～伝え方で成果が変わった瞬間

ある営業マネージャーは、長年「商品の魅力を説明しても契約につながらない」と悩んでいました。

彼が変えたのは、説明の仕方ではなく主語の置き換えです。

従来の言い方－「私たちのサービスは高性能です」
改善後の言い方－「このサービスを使うと、あなたのチームの残業時間が30％減ります」

数か月後、契約率は20％アップ。
彼はこう語りました。

「正論を並べるよりも、相手の生活や仕事に結びつけて伝える方が、はるかに響くと実感しました」

成果を変えるのは、知識や努力ではなく、伝え方の工夫なのです。

会話術を定着させる習慣化のコツ

新しい会話術を学んでも、1回使っただけでは成果は安定しません。
大切なのは日常の中で「習慣化」することです。
会話力は筋肉と同じで、繰り返すことで強化されていきます。

毎日の小さな実践を積み重ねる

一気に変えようとすると挫折しやすいため、まずは1日1回だけ「主語を相手に移す」練習をしましょう。

たとえば家族や同僚との会話で「あなたはどう感じますか」と問いかけてみる。
これを繰り返すことで、自然と相手視点の言葉選びが身につきます。

振り返りで成長を加速させる

その日の会話を振り返り「どの場面で相手が反応してくれたか」をメモすると効果的です。
小さな成功体験を記録することで「次もやってみよう」という意欲が高まります。

環境を整える

周囲に「共感的な会話」を意識している仲間がいると、習慣化は加速します。
上司や同僚と「一緒に聞き方を工夫してみよう」と共有するのも有効です。
環境を味方につけることで、会話術は日常に定着していきます。

まとめ～伝え方と聞き方の技術を実践に生かす一歩

本記事では「相手に刺さる伝え方と会話の技術」をテーマに解説しました。

要点を整理すると次の通りです。

会話は正論よりも相手視点で伝えることが大切
伝え方と聞き方を両立させることで信頼が生まれる
スルーされない話し方は短く・明確に・相手軸
共感を呼ぶ言葉選びで感情を動かす
認知バイアスを活用すると成果に直結する
習慣化の工夫で会話術は日常に根づく

今日からできる一歩は「主語を相手に移すこと」。

たとえば次の会話で「私は～」を「あなたは～」に変えてみましょう。
所要時間はゼロ。得られるリターンは「相手の反応が変わる」という大きな成果です。

言葉は習慣です。小さな言い換えの積み重ねが、信頼を築き、成果を生む会話力へと変わっていきます。

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執筆者

遠藤貴則法廷臨床心理学博士 Takanori K. Endo

法廷臨床心理学博士・ニューロマーケティング（脳科学マーケティング）トレーナー
株式会社ビジネスサイエンスジャパン取締役。ビジネスサイエンストレーニングアカデミー学長。

1985年東京都文京区生まれ。神奈川県横浜市のサン・モール・インターナショナル・スクールの高校を卒業。
2006年米国オレゴン州ルイス＆クラーク大学にて心理学専攻及び中国語を副専攻で大学卒業。
2008年米国フロリダ州アルビズ大学大学院にて心理学修士課程修了。
2013年同大学院臨床心理学博士号、法廷特化で卒業（博士論文Doctoral Project:Endo, T. K. (2012) Test Construction: Clinician’s Gay Male Competence Inventory. (Doctoral dissertation, Carlos Albizu University)。後、オレゴン州にて臨床心理学社の国家治療免状を獲得。マイアミ市警、FBI、CIAの調査支援を行った実績を持つ。
2017年には薬物依存人口を減らした功績を称えられ、2017年フロリダ州ジュピター市より表彰される（2017 Best of Jupiter Awards - Drug Abuse & Addiction Center）。現在は実践的ビジネスサイエンス、実践的心理学、脳科学的教育、ニューロマーケティングの普及、後進の育成に努める。著書に『売れるまでの時間-残り39秒脳が断れない「無敵のセールスシステム」』（きずな出版）、共著に『仕事の教科書』（徳間書店）がある。

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